2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岸本 崇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20372576)
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Keywords | affine-uniruledness / affine-ruledness / 群作用 / log canonical threshold / minimal model program / Fano variety / del Pezzo fibration |
Research Abstract |
一括りで述べれば我々の研究対象はaffine uniruledな3次元アフィン代数多様体である.2次元アフィン代数多様体(アフィン曲面)の場合には,affine uniruledという概念とaffine ruledという概念は一致することが知られているが,3次元(以上)になるとaffine uniruledであるがaffine ruledではないような3次元(以上の)アフィン代数多様体は存在する.(ただしそのような例の構成は自明ではない.実際に,そのような例の構成については,以前のDubouloz氏との共同研究の内容である.)そのような病的な例としては,3次元射影空間内の非特異3次曲面の補集合とか重み付き射影空間P(1,1,2,3)内の非特異6次曲面の補集合というものが挙げられる.これらの多様体がaffine uniruledでありながらaffine ruledでないという病的な性質を有していることは偶然に発見したのであるが,何故そのような現象が発生するのかという内的なメカニズムの解明には至っていない.しかしDubouloz氏との継続的な共同研究によって,少しずつその本質が明らかになってきた.例えば重み付き射影空間P(1,1,2,3)内の非特異6次曲面Sの補集合X=P(1,1,2,3)-Sの場合には,Sの幾何学的特徴を浮き彫りにする特殊な超平面Hをとってきた上でSと6Hで生成される線形束Lを考える.Xの幾何学を理解するには,Lの基底点を可能な限り明示的に解消して,解消後に得られた線形束に付随した射に双対的に極小モデルプログラム(MMP)を具体的に実行することが求められる.2次元迄と違い,3次元以上の場合にはMMPを詳細に記述することは困難が伴う.しかし我々はLの解消およびMMPのプロセスを非常に明示的に記述することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度までの研究の達成度であるが,「研究実績の概要」の項目で述べさせて頂いたように,高次元アフィン代数幾何学の1つの病的現象であるaffine unirulednessとaffine rulednessの食い違いについてのメカニズムについて,双有理幾何学的な視点から少しずつ解明しつつある.つまり「研究実績の概要」の項目で述べたように,このような食い違いが発生するメカニズムを,ある種の線形束の解消とその後のMMPのプロセスを明示的に記述する1つのテクニックを開発することで解明できると期待している.さて今迄はaffine rulednessとaffine rulednessの差異について繰り返し述べてきたが,更にaffine rulednessとGa-作用の存在についても一般には大きな差異がある.大雑把に言うと,Ga-作用の存在はA^1-fibrationの存在,つまりaffine rulednessを意味するが,逆は一般には成り立たない.Ga-作用の存在の利点は,必要に応じてより代数的・機械的に取り扱い,商空間,商写像の性質(商空間の特異点の種類,商写像の全射性など)という幾何学な情報を得ることができるということである.我々は,偏極射影多様体上のアフィン錐がGa-作用を有するかどうかという問題についてもProkhorov氏-Zaidenberg氏との共同研究によって考察を進めてきており,幾つかの重要な結果を得ることが出来た.注目すべきは,そのようなアフィン錐へのGa-作用の存在の有無を,下の偏極射影多様体の幾何学で判定することができるという点である.この判定法を用いて,次数が4以上の反標準的del Pezzo錐にGa-作用が存在することを示し,逆に次数が2以下の反標準的del Pezzo錐にはそのような作用が存在しないことを示すことに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標としては: 1) 「研究実績の概要」の項目で述べた,Sと6Hで生成される線形束を解消してから,相対的にMMPを実行したときにMori conic bundleに至るような例を構成するか,またはどのようにSと6Hを選択してもMMPの帰結は次数1のdel Pezzo fibrationであることを示す. 2) 「現在までの達成度」の項目で述べた,偏極射影多様体として3次元Fano多様体,またはdel Pezzo fibrationの場合にその上のアフィン錐にGa-作用が存在するのかどうかについて, 特に次数3のdel Pezzo fibrationの場合について考察する. の2点の問題について進展させることを目標とする.1)の問題については,どのようなSを選択するのかというのが問題であるが,今後はSの定義方程式に依存しないより一般的な幾何学的な考察により実行するテクニックを開発することが必要になってくると思われる.2)の問題についてはProkhorov-Zaidenbergとの共同研究で得られたGa-作用の存在の判定法と,Cheltsov-Park-Wonの結果を組み合わせることが鍵になってくる.この場合,Ga-作用存在の判定法により,次数3のdel Pezzo fibrationに適当なcylinderが存在するのかどうかが本質になってくる.Cheltsov-Park-Wonの結果とadjunctionによって,もし次数3のdel Pezzo fibrationがcylinderを有していたとしても,そのcylinderを各ファイバーに制限してもそこではcylinderにはなっていないという少し奇妙な状態になるが,del Pezzo fibration に特異点を認めると,そのような現象は起こるのではないかと思っている.
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