2013 Fiscal Year Research-status Report
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24740004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 寛通 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (30322150)
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Keywords | ホモロジー的射影双対性 / Reye合同型Enriques曲面 / Artin-Mumford二重立体 / Enriques-Fano 3-fold / 直交線形切断 |
Research Abstract |
本年度は,3次元射影空間の2次対称積Xと,9次元射影空間の,4次対称超曲面で分岐する2重被覆Yのホモロジー的射影双対性(以下,HPD性)について研究した.これは,細野忍氏(東大数理)との共同研究である.HPD性とは,Kuznetsov氏によって導入された,二つの多様体間の双対性で,特に,二つの多様体が互いにHPDであれば,それらの直交線形切断の導来圏間の関係が一挙に明らかになる.一般に二つの多様体が互いにHPDであるかの判定は予想がついても困難であることが多い.しかし,HPD性を予言するそれらの直交線形切断の導来圏間の関係を確かめることは,しばしば可能であり,また,それをHPD性に代えることができると言ってもよい.当該研究は,細野氏との前共同研究である,4次元射影空間の2次対称積の場合の研究,特にその線形切断として得られるCalabi-Yau 3-foldの導来圏の研究の延長上にある.前研究との類似,および,当該研究の対象が古典的によく研究されてきた興味深いものであったことが研究動機である.本年度は,上記のXとYの様々な直交線形切断について,HPD性から予言されるそれらのほぼすべての導来圏間の関係を確かめた.特に,二組の直交線形切断,Reye合同型Enriques曲面とArtin-Mumfordの二重立体,および,Reye合同型Enriques-Fano 3-foldと2次del Pezzo曲面,の導来圏について,後者については,HPD性から予言される導来圏の関係を確かめ,前者については,Enriques曲面の導来圏から二重立体の特異点解消の導来圏への充満忠実な関手を構成した.前者については引き続き研究する.方法としては,XとYの射影幾何的および双有理幾何的性質を詳しく調べることで,直交線形切断の導来圏の関係を与える関手のもととなる幾何学的対象を見つけ出すことである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上で述べた,Reye合同型Enriques曲面とArtin-Mumford二重立体の導来圏の関係の記述は,部分的にIngalls-Kuznetsovによって示されていた.しかし,その方法を拡張することで,導来圏の関係を完全に確立するのは困難と思われ,細野氏との前共同研究と類似のアプローチを始めた.始めた際は,全研究との類似性に驚き,ほぼそれと同様の証明が通用するものと楽観視していたが,次第に,相違点が明らかとなってきて,それを克服することは手ごわい問題であった.特に,導来圏の間の充満忠実な関手のもととなる幾何学的対象に到達するのに多くの時間を費やした.前研究との相違点に苦しめられたものの,年度内に,正しい幾何学的対象にたどり着いたので研究としては順調であったと言える.また,上には記さなかったが,当該研究者の単独の研究である,Q-Fano 3-foldの線形切断としての記述の研究についても進展があった.この研究が,当初から当該研究者がもっとも力を注いできたものであるが,細野氏との共同研究によって,導来圏的知見を得て,多くのQ-Fano 3-foldの導来圏のHPD的記述に成功した.このような思わぬ収穫があったことに満足している.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,Reye合同型Enriques曲面とArtin-Mumford二重立体の導来圏の関係を確立する.すでに正しい幾何学的対象を見出しているので,完成は近いと思われる.また,この研究と,細野氏との前研究の類似点,相違点を反省して,統一的な視点を模索したい.それによって,任意次元の射影空間の2次対称積のHPD性について知見が得られることを目指す.その際,Clliford代数の偶次部分が重要な役割を果たすと考えている.また,Q-Fano 3-foldの直交線形切断としての記述について,25年度に得られた導来圏的知見をもとにして,それらを直交線形切断として与える半等質空間の正しい表現論的味方を模索する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究費を申請した時点では,夏季休業中に海外に長期滞在して研究を行う計画を立てていたが,夏季休業中に勤務先において重要な任務を負うことになったため,それが不可能となった.そのため,旅費の支出が抑えられた. 本年度も夏季休業中に同任務を負っているため,それ以外の期間に,短期で国内外の出張を計画し,研究成果の発表を行う機会を増やす.
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 線形切断いろいろ2013
Author(s)
高木寛通
Organizer
研究集会「Fano 多様体の最近の進展」
Place of Presentation
京都大学数理解析研究所
Year and Date
20131218-20131218
Invited
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