2014 Fiscal Year Research-status Report
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24740004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 寛通 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (30322150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Reye合同型Enriques曲面 / quartic double solid / ホモロジー的射影双対 / 導来圏の半直交分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は細野忍氏と共同で研究した.Vを4次元ベクトル空間とし,V*でその双対を表す. Vの射影化P(V)の2次対称積 S2 P(V)をP(S2 V)に埋め込んだとき,そのホモロジー的射影双対はP(S2 V*)の二重被覆Y_0であって,分岐が4次対称行列の行列式で定義される4次超曲面であるものと予想されている.本年度は、その予想に関して,S2 P(V)とY_0の互いに直交する線形切断の導来圏の関係について研究した.S2 P(V)の余次元4の線形切断は,Reye合同型のEnriques曲面Xとして知られ,それに直交するY_0の線形切断YはArtin-Mumford double solidとして知られている.25年度,Xの導来圏からYの特異点解消Y'の導来圏へのFourier-Mukai関手の核を構成し,それが充満忠実であることを示した.26年度は,その研究を推し進め,Xの導来圏を半直交成分に持つY'の導来圏の半直交分解を構成した.この結果は,Ingalls-Kuznetsovによる先行結果の理想的な拡張である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究成果は,それ以前に細野忍氏と手がけてきたReye合同型Calabi-Yau 3-foldの導来圏の研究の延長上にある問題の解決である.実は,26年度の研究対象であるReye合同型Enriques曲面の方が歴史は古く,我々の研究以前にも様々な視点から研究されてきた.Calabi-Yau 3-foldの場合の導来圏については理想的な研究結果を得ていたので,歴史の古いEnriques曲面の場合にも導来圏を記述するのは意義があると思い研究を開始した.研究開始当初は、3-foldの場合の技法が曲面の場合にも応用できるであろうこと,また,曲面の方が3-foldよりも研究しやすいであろうこと,を予想したが,確かに,3-foldの場合の技法は助けになったとものの、曲面の場合の方がより多くの技術的困難をともなうことが判明した.それらを克服し,研究実績の概要で述べたとおり,理想的な結果を得ることができたので,順調な進展といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
Reye合同型のCalabi-Yau 3-foldとEnriques曲面の研究から,spherical多様体において完全交叉として得られる多様体という視点が浮かび上がってきた.spherical多様体とは,代数群の有理等質空間やtoric多様体を含む重要な多様体のクラスである.Calabi-Yau 3-foldに関して言えば,我々がReye合同型のものを研究する以前は,主に等質空間とtoric多様体における完全交叉として得られるものが研究されてきた.Reye合同型のものは,等質空間でもtoric多様体でもないspherical多様体において完全交叉となっている.そこで,spherical多様体において完全交叉となっているCalabi-Yau 3-foldの分類問題に取り組む.spherical多様体が等質空間の場合には,この問題はすでに解決されていて,ルート系を用いて答えが記述できる.一般の場合のspherical多様体にも,なんらかの組合せ論的な記述があると期待されるので,それを突き止めることを目指す.また,等質空間でもtoric多様体でもないspherical多様体において完全交叉となっている特異Fano 3-foldの例を当該研究者はすでに発見した.そこで,同時に,spherical多様体において完全交叉となっている特異Fano 3-foldの分類問題にも取り組む.その解決は、当該研究者の研究目的である特異Fano 3-foldの分類問題に大きな進展をもたらすと考えている.また,上記の問題の解決の帰結として,Reye合同型のような興味深いCalabi-Yau 3-foldが発見できることも期待している.
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Causes of Carryover |
成果発表と研究連絡のためにまとまった海外出張を計画していたが時間がとれず 断念したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に成果発表と研究連絡のためにまとまった海外出張および国内出張を行って使用する。
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