2012 Fiscal Year Research-status Report
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24740018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山崎 義徳 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00533035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゼータ関数 / ゼータ正規化積 |
Research Abstract |
本年度は主にゼータ正規化積の一般論について研究した。ゼータ正規化積とは、複素数列の無限積をゼータ関数を用いて拡張したものである。報告者は、これまでの研究で数列が保型L関数の零点で与えられる場合にゼータ正規化積を具体的に計算している。この一般化として、この公式を Selberg 族と呼ばれる族に属するL関数へ拡張することを試みた。そのためには、対応する明示公式が必要となるが、これには Smajlovic (2010) によって得られたものが使えることを確認した。計算が煩雑で最終的な表示にはまだ到達していないので、これは来年度も継続して計算を行うものとする。 また、本研究の有限類似として、Ramanujan グラフについての研究も行った。Ramanujan グラフとは、対応する Ihara ゼータ関数が Riemann 予想を満たすようなグラフのことである。具体的には、巡回グラフ (=巡回群に付随する Cayley グラフ) と呼ばれるグラフの族に対して、グラフが完全グラフからどれぐらい近いところまで Ramanujan グラフであり続けるかを完全に決定した。また、その境界部分には、Hardy-Littlewood, Bateman-Horn 予想と呼ばれる解析数論の重要な問題が関係することも明らかにした。これは愛媛大学の平野幹氏と堅田晃平氏との共同研究であり、現在論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Selberg 族に属するL関数の零点に対するゼータ正規化積を計算する場合、零点と素数を結ぶ明示公式は必要不可欠である。そのため、Smajlovic (2010) によって得られた明示公式が使えることを確認できたことは、本研究において非常に大きな進展である。また、Selberg 族は現在知られている多くの数論的L関数を含んでいるので、本研究は完成すれば今後のゼータ正規化積の研究においても重要な位置づけになると考えられる。 一方で、Ramanujan グラフについての研究は、正規化積の有限類似という意味でも重要であり、これにより本研究を新たな側面から俯瞰することも可能になるのではないかと考えられる。さらに、この問題は巡回グラフに限らず、グラフの族を取り換えるごとに当然考えるべき問題であり、グラフ理論の新たな数論的アプローチになり得るものだと考えられる。巡回グラフはその中でもいちばん基本的な族であり、ここで理論を確立した意味は非常に大きいと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは上記に書いた問題 (Selberg 族に属するL関数の零点に対するゼータ正規化積の計算) に決着をつけることを最優先とする。その後、より一般的な状況で同様の問題を考え、そこからどのような特殊関数が現れるかを順次研究していく。問題となるのは、考える数列の偏角をどのようにコントロールするかだが、これに対しては、具体的な易しい数列から調べ、徐々に条件を緩めて一般論を構築していく。 また Ramanujan グラフの研究については、グラフの族を巡回グラフの次に基本的であると考えられる二面体グラフ (=二面体群に付随する Cayley グラフ) に取り換えて同様の議論を行う。二面体グラフまでは巡回グラフと同様の結果が得られると期待されるが、それ以上グラフを複雑にすると、グラフの固有値の評価が数論的にも困難になると考えられるので、問題設定も含めて研究手法を再考察していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はほぼ計画通り研究費を使用することができたが、少額(2,596円)が残ってしまった。これは来年度に出張の際の旅費として使用する。
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