2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740019
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三枝 洋一 京都大学, 白眉センター, 准教授 (70526962)
|
Keywords | 局所ラングランズ対応 / Rapoport-Zink空間 / エタールコホモロジー / リジッド幾何 / p進代数群の表現論 |
Research Abstract |
Rapoport-Zink空間のエタールコホモロジーを通して,p進簡約代数群に対するラングランズ対応およびラングランズ関手性を理解することがこの研究の主な目標である.平成24年度には,GSp(4)やGU(3)などの比較的小さい群に対し,対応するRapoport-Zink空間を詳しく調査したが,その結果に基づき,平成25年度には,なるべく一般のRapoport-Zink空間に対してどのようなことがいえるかという立場から研究を進めた. まずはじめに,レベルなしのRapoport-Zink空間の既約成分の集合について研究を行った.Rapoport-Zink空間は有限型ではないため,通常,既約成分は無限個存在するが,空間に自然に作用する群Jに関して既約成分の軌道の集合を考えると,こちらは有限個であることが期待されていた.この有限性は,不分岐な群に対応する場合にはFarguesによって既に得られていたが,群が分岐する場合にはまとまった結果は知られていなかった.そこで,Rapoport-Zink空間を与える構造付きp可除群がアーベル多様体から来るという条件のもとで,この有限性の予想を証明した.応用として,このようなRapoport-Zink空間のコホモロジーから構成される表現が,「許容的」という,従来の表現論が適用可能なクラスになることがわかる.証明の手法は,Farguesによる線型代数的なものとは大きく異なり,アーベル多様体のモジュライ空間に対するOortの概直積構造の結果を分岐する場合に一般化するというものであり,これ自体も将来性のある成果であると考えている. 次に,Rapoport-Zink空間のコホモロジーとZelevinsky対合の関係についての考察を推し進め,論文にまとめた.平成24年度には,GSp(4)に対する場合に限って研究を行っていたが,上記の有限性の結果に加え,形式モデルの方向にのみコンパクト台を持つ新たなコホモロジーを導入したことによって,議論を適用できる範囲が大きく広がったのが今年度の主要な進展である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に引き続き実施したZelevinsky対合とRapoport-Zink空間のコホモロジーに関する研究において,当初の予想よりも一般の場合で証明が機能することが分かった.また,かなり一般のRapoport-Zink空間に対し,その既約成分に関する有限性の結果を得たが,これも申請時の計画より強いものになっている.これらの成果により,サイズの大きな群に対しても非可換ルビン・テイト理論への道が拓けたと思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度と今年度の研究成果によって,Rapoport-Zink空間のコホモロジーを調べる道具立てが揃いつつある.残された課題として,Faltings同型を一般化するという問題がある.これが達成されると,コホモロジーの中に現れる表現が長さ有限であることが確定し,これまでの結果が有効に機能することが保証される.今後はまず,この課題を早急に解決したい.その後は,現在までに得られた結果を総動員して,Rapoport-Zink空間のコホモロジーに対する定量的な結果を導く予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,前年度から引き続いて行った研究についても論文の作成を行ったため,論文作成に多くの時間を割く必要があり,本研究に関する海外出張が予定よりも少なかったことが主な理由である. 次年度は,大域的な手法を用いてRapoport-Zink空間のエタールコホモロジーを調べることを計画しており,保型表現に関する情報収集および専門家との研究討論が必要不可欠である.そのため,特に海外への出張,および国外の研究者の招聘に重点的に研究費を配分する予定である.また,当該分野における重要な書籍が多数出版されているので,その購入も行う予定である.
|