2012 Fiscal Year Research-status Report
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24740021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
伊藤 稔 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (60381141)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不変式論の第二基本定理 / Cayley-Hamilton定理 / Amitsur-Levitzki定理 / 外積代数 |
Research Abstract |
前年度に始めた多項式環における不変式論の研究を進めた。不変式論の第一基本定理(生成元の記述)や第二基本定理(生成元のあいだの関係式の記述)が具体的に書き下せるような不変式環は多くないが、古典群の作用に関するある8つの系列の不変式環はその第二基本定理が Cayley-Hamilton の定理やそのいくつかの類似物(阿賀岡(1987)、Djokovic (1991)、伊藤(2001)によるものなどを含む)で記述できる。 この結果のSiegel-Jacobi空間上の不変微分作用素への応用を与えて、Jae-Hyun Yang、落合啓之との共著論文 "Invariant differential operators on Siegel-Jacobi space"にまとめた。 また外積代数における不変式論の研究を進めた。典型例は正方行列のなすベクトル空間の上の外積代数のconjugationに関する不変式環であり、可換な枠組みでよく知られていること(固有多項式に関する初等的な線型代数の結果)と対応する性質をいろいろ持つ。前年度までに見いだしていたものに追加して、さらにいくつかの可換な枠組みと対応する結果を得た。たとえば可換な枠組みではこの行列空間上のconjugationに関する不変式環は固有値の対称式と同一視できるが、これに対応する「反可換版の固有値の生成する代数」を構成した。この代数はある余不変式環の上のClifford代数として構成できて、対称群による自然な作用に関するこの代数の不変式環は上記の外積代数の中のconjugation不変式のなす代数と同型になるのである。この代数の基本的な性質を調べて、可換版とうまく対応していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不変式論の第一基本定理・第二基本定理については、可換な枠組み・非可換な枠組みともシンプルでしかも豊かな結果を得ている。とくに非可換な枠組みについてはAmitsur-Levitzki型の関係式との関係や「反可換対称式」の問題など興味深い面が多い。当初の計画の中では微分概念との結びつきはあまり進んでいないものの、全体としては順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
多項式環における8つの系列の不変式環のうち、まだ第二基本定理がSchur多項式のかたちに整理できていないものが3つある。これの決着をつけたい。またこの8系列のほかにも同じ方法で第一基本定理を具体的に書き下せる不変式環が多くあり、これらについても第二基本定理の可能性を考えたい。 外積代数の不変式論は、第二基本定理や高次のCayley-Hamilton型定理についてまだ不明な点が多い。この周辺は未開拓なだけで、今のところ大きな困難があるようには見えない。進展を期待したい。また「反可換版の固有値の生成する代数」についても研究は始まったばかりである。可換な枠組みと対応する性質が断片的に見られるが、まだ謎も多く、その基本的な性質を解き明かした上で、反可換な枠組みでの標準形(対角化)の問題をうまく定式化したい。 最終的には可換・反可換を含むさらに大きな枠組みで扱うことを目指すが、そこで以前に得たテンソル代数における微分概念と結びつけたい。微分概念については、対称群と一般線型群をまとめて取り扱う枠組みはできており、これをうまく活かしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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