2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740026
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
笹木 集夢 東海大学, 理学部, 講師 (60514453)
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Keywords | 可視的作用 / 球等質空間 / カルタン分解 / スライス / ケーリー型 |
Research Abstract |
複素単純リー群のアフィン複素等質空間における可視的作用の理論において,その極大コンパクト群の作用による各軌道と交叉する部分多様体(スライス)を具体的に記述することは重要な問題の1つである.対称空間の場合は古くから多くの一般論が整備されており,この問題は既に解決されている.一方で,非対称空間の場合はスライスの構成に関する理論はほとんど知られていない.そこで,可視的作用の視点により,群が作用する空間の構造定理を抽出することも本課題の本質であることが明確になった.この視点により,既約な球等質空間に対する本研究は,研究代表者によって前年度までに多くの場合に結果を得ていた.本年度は,未解決であったケーリー型に対する研究のアプローチを再考することも兼ねて,スライスの構造の精緻な研究を中心に据え実施した. 本年度実施した研究の結果,以下の成果を得た. 1.ケーリー型球等質空間に対してカルタン分解の一般化を与えた.特に,スライスとしてアーベル群を選ぶことができることを証明し,対称空間に対する理論の拡張をこの場合にも得た.本研究は,等質空間の「中間」の群でよいものを選ぶことにより,直線束に対する可視的作用の研究過程が部分的に現れることを発見したことにより大きく進展した.本研究の概要を,2013年9月に京都大学における講演にて発表した. 2.1で述べた結果を受けて,ケーリー型球等質空間における極大コンパクト群の作用を可視的作用の視点から研究し肯定的に解決した.本研究の成果も,2013年9月に京都大学における講演にて発表した. 3.以上により,複素単純リー群の球等質空間はその極大コンパクト群が可視的に作用することが証明された.特に,既約なアフィン複素等質空間に対して,極大コンパクト群が可視的に作用するものを分類することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既約なアフィン複素等質空間に対する研究で残っていたケーリー型について研究成果を得たことにより,既約な場合の分類理論が一応の解決を見た.しかし,既約な場合の結果の口頭発表を今年度実施する予定であること,また論文が未完成であることが全体の計画からやや遅れていると判断する.また,既約でないアフィン複素等質空間に対する研究は今年度より着手することとなる. 一方で,本研究を通じて球等質空間上の調和解析に関する新たな研究課題が生まれ,本課題と同時に研究していることも原因の1つである.しかし,並行して研究することは本課題にも効果的であるととらえている.
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Strategy for Future Research Activity |
既約な場合の研究結果や過程を利用して既約ではない場合について研究を遂行する.実際に,群作用を部分的に考察することにより既約な球等質空間に対する作用の「組み合わせ」と理解することができる. 一方で,球等質空間上の調和解析を並行して行うことにより,アーベル群をスライスとして選ぶ方法に関する一般論の構築も目指す.特に,球等質空間上の調和解析に有用なスライスの構成法についても調べる. 一方で,昨年度までの研究成果を国内外で発表し論文にまとめる.研究発表については,既に京都大学数理解析研究所とモロッコで行うことが決定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
京都大学数理解析研究所研究集会「表現論および表現論に関連する諸分野の発展」の研究代表者として研究集会を開催した際に,それに関わる出張費などを研究集会を運営するための予算から支出したため. 研究を遂行するために必要な書籍の購入や論文の印刷代,また必要な文具などの物品費,および研究成果の報告や情報収集に必要な旅費に充てる.次年度は,モロッコのカサブランカで開催される研究集会に参加予定であり,本年度の繰越金とあわせて出張費として使用する予定である.
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