2013 Fiscal Year Research-status Report
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24740027
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
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Keywords | 頂点作用素代数 / 有限群 / 3互換群 / ヴィラソロ代数 |
Research Abstract |
本研究の目的は、単純ヴィラソロ元の持つ対称性を用いて標数3型の直交群を頂点作用素代数上に実現することである。頂点作用素代数において中心電荷 4/5 のヴィラソロ元はヴィラソロ頂点作用素部分代数を生成するが、この部分代数にウェイト3の原始元を追加してW_3代数に拡張できるとき、このようなヴィラソロ元を拡大ヴィラソロ元と呼ぶ。拡大ヴィラソロ元にはシグマ型とそうでないものがあり、それぞれの場合に応じてフュージョン代数には非シグマ型の場合は位数3の対称性が、シグマ型の場合には位数2の対称性があることが知られている。研究計画にもあるように、シグマ型の中心電荷 4/5 拡大ヴィラソロ元の定める位数2の対称性を集めると、これは3互換群を作ることが分かっていた。このようなヴィラソロ元を複数個の含む頂点作用素代数の例はA2型ルート格子に付随した頂点作用素代数を除けば、これまでほとんど知られていなかった。 今年度は C.H. Lam 氏と共同でシグマ型の中心電荷 4/5 拡大ヴィラソロ元を含む頂点作用素代数の系列的な構成について研究を行い、このような頂点作用素代数が位数4の有限体上の符号を用いて一般的に構成できることを示した。この構成法で得られる頂点作用素代数のうち、モンスター群の3局所群への応用上、特に重要となるであろう例としてヘキサコードに付随したものを詳細に調べ上げた。これはコクセター・トッド格子に付随した格子頂点作用素代数において位数3の自己同型による不動点部分代数をとったものになり、その自己同型群を調べた結果、期待通りモンスターの3局所構造と関係する標数3型の直交群がシグマ型の中心電荷 4/5 拡大ヴィラソロ元の対称性から実現できることを明らかにできた。以上の成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で掲げた研究ステップに関し、次の2つの課題について期待通りの進展が得られた。 (1)中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元による直交型3互換群の実現 (2)格子頂点作用素代数の位数3の自己同型による不動点部分代数への中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元の埋め込みの分類 この課題に対しては、中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元をたくさん含むような頂点作用素代数の例がほとんどないことから、まず例を構成することから始めなければならなかったが、位数4の有限体上の符号を用いることで一般的な構成法を確立することができた。こうして構成した例のうち、モンスター群の3局所構造と関連が見いだせるものとしてヘキサコードに付随したものについて詳細に調べ上げたところ、確かにモンスターの3局所構造に関係する標数3型の直交群が中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元を用いて3互換群として実現できることを示すことができた。これにより、上記(1)の実現性については肯定的な解決が得られた。 また、ヘキサコードから構成される例に関しては、A2型ルート系からは得られない、特別な中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元が含まれていることも示すことができた。これで少なくとも A2 型とコクセター・トッド型の二種類の埋め込みがあることが分かったが、これがすべてであると予想を立てるに至り、分類問題についてもはっきりと定式化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により得られた成果に基づいて、引き続き以下の課題の完全な解決を目指す。 (1)中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元から実現される3互換群はすべて直交型に限ることの証明 (2)格子頂点作用素代数の位数3の自己同型による不動点部分代数への中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元の埋め込みの分類 (3)ムーンシャイン頂点作用素代数のZ_3軌道体構成法によるZ[1/3]形の存在証明 (1)については、直交型となる多くの例を構成することができたが、ユニタリ型が現れるかどうかはまだ決定できていない。もしユニタリ型が現れるのであれば、2^{1+6}:(3^2:2) 型の3互換群が中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元により実現されるが、仮にこの実現が存在したとして、この群に対応するフィッシャー空間の構造と拡大ヴィラソロ元から生成されるグライス代数の構造を見比べ、矛盾が生じることを確認できれば、ユニタリ型の非存在が証明でき、ひいては直交型のみ実現されることが証明できる。この確認に取り組む。(2)については求める埋め込みは A2 型もしくはコクセター・トッド型に限るという予想が定式化できたので、この証明に取り組む。(3)についてはモンスターの3局所群に関係する標数3型の直交群がコクセター・トッド格子に付随した格子頂点作用素代数の位数3の自己同型による不動点部分代数上に中心電荷 4/5 の拡大ヴィラソロ元を用いて実現できたので、これを足がかりに、リーチ格子に付随した格子頂点作用素代数の位数3の自己同型群による不動点部分代数の構造とその表現を詳細に調べ上げ、ムーンシャイン頂点作用素代数のZ_3軌道体構成法の確立とそのZ[1/3]形の証明に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
なるべく安い航空券を利用するなど、科研費の節約に努めたため。 研究協力者の招聘旅費や、自身の国内・海外への出張旅費として、研究情報収集のため有効に活用する。
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Research Products
(9 results)