2013 Fiscal Year Research-status Report
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24740028
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
三鍋 聡司 東京電機大学, 工学部, 助教 (30455688)
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Keywords | コホモロジー / 混合フロベニウス構造 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度に引き続き、混合フロベニウス多様体に関する研究を行った。混合フロベニウス多様体とは、フロベニウス多様体の一般化であり、 局所カラビ・ヤウ多様体と呼ばれる非コンパクトなカラビ・ヤウ多様体のミラー対称性(局所ミラー対称性)の数学的定式化を動機として導入された概念である。定義を大雑把に説明すると、各点の接空間が代数構造を持つ複素多様体であり、各接空間にはイデアルの飽和フィルターが指定され、その逐次商の上に積構造と整合的な平坦計量が存在するとき, その多様体を混合フロベニウス多様体という。 平成24年度の研究の主結果は、局所カラビ・ヤウ多様体の量子コホモロジー上の混合フロベニウス構造の構成であった。平成25年度の研究では、カラビ・ヤウとは限らないより一般的な状況で、局所グロモフ・ウィッテン不変量を用いて混合フロベニウス構造が得られることが分かった。 詳しく述べると次の通りである。非特異な射影的多様体上にある種の負値性の条件を満たすベクトル束を考える。例としては、負の直線束の直和となっているようなベクトル束を考えればよい。このとき、このベクトル束から定まる局所グロモフ・ウィッテン不変量を用いて、底空間の多様体のコホモロジー上に混合フロベニウス構造を構成することができる。構成法は次の通りである。まずは同変局所グロモフ・ウィッテン不変量が定める同変的なフロベニウス構造を考える。そしてその非同変極限をとることによって混合フロベニウス構造が自然に得られる。なお、混合フロベニウス構造の一般論を整理するため、混合フロベニウス多様体を定義する条件の一部の見直しや、そのもとになる混合フロベニウス代数についての研究も行った。以上の内容については、共同研究者である小西氏との共著論文を現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度においては、混合フロベニウス構造の研究に時間を費やしたため、リーマン面のモジュライ空間のコホモロジーに関する研究はやや遅れている。しかしながら、混合フロベニウス構造の理論はリーマン面のモジュライ空間の研究にも応用できる可能性があるので、今後はその方向の研究を推進し、遅れを取り戻したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
種数が正のリーマン面のモジュライ空間のコホモロジーの研究では、トートロジカル環と呼ばれるコホモロジーの部分環の研究が重要である。近年、トートロジカル環の元たちの間の関係式を求める問題が急速に発展した。そこで重要な役割を果たしたのが、フロベニウス多様体の理論(またはコホモロジー的場の理論)とその量子化の理論である。混合フロベニウス多様体の理論についても、同じようにトートロジカル環の研究に利用できる可能性がある。今後はこの方向性を追求したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の分の助成金についてはほぼ計画通りに使用出来たが、前年度からの繰り越しの分が残ってしまった。 次年度の研究費についても、今年度と同様に主に物品費や旅費として使用する予定である。次年度使用額に関しては、次年度分と合わせて同じ用途で用いる。特に海外出張が生じた際には、そのための旅費の一部として使用したいと考えている。
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