2014 Fiscal Year Research-status Report
等質ラグランジュ部分多様体の対の交叉とFloerホモロジーの研究
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24740049
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
入江 博 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (30385489)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トポロジー / Floerホモロジー / 旗多様体 / 対蹠集合 / ラグランジュ部分多様体 / 等径超曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.複素射影空間の中の第二基本形式が平行なラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関しては、射影ユニタリ群PU(p)として埋め込まれたラグランジュ部分多様体のZ_2係数のFloerコホモロジーについて昨年度未解決であったpが2のべきではない偶数の場合の計算が完了した。この結果を追加して、昨年度まとめたプレプリントの改訂作業を進めた。 2.複素旗多様体の二つの実形の交叉に関する酒井高司氏(首都大学東京)、田崎博之氏(筑波大学)との共同研究については、まず実形が合同な場合に交叉が離散的になるための必要十分条件を得て、その離散的な交叉が対称対のWeyl群の軌道として表せ、対蹠集合になることを示した。さらに、井川治氏(京都工芸繊維大学)、奥田隆幸氏(広島大学)を加えた5名による共同研究により、二つの実形が合同とは限らない場合にも結果を拡張した。 3.ユークリッド空間内の単位超球面の等径超曲面のガウス写像による像(以下、ガウス像と呼ぶ)は、複素2次超曲面の単調なラグランジュ部分多様体となる。上の項目1で開発した計算手法により、等径超曲面のガウス像の最小Maslov数が3以上の場合、それは複素2次超曲面のハミルトンイソトピーの下でnon-displaceableであることを示した。これは、Hui Ma氏(清華大学)、宮岡礼子氏(東北大学)、大仁田義裕氏(大阪市立大学)との共同研究である。特に、非等質な無限個のnon-displaceableな例が得られたことは特筆すべきことである。 4.複素ユークリッド空間内の標準的ラグランジュトーラスはハミルトン体積最小であろう、というOhの予想に対して、ほとんどの標準トーラスでは予想が成立しないことをChekanovの定理を用いて証明した。これは、小野肇氏(埼玉大学)との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目1について、昨年度の未解決の部分が解決でき、その結果を追加したプレプリント(arXiv:1401.0777)の改訂作業も進行中である。また、昨年度までに行ってきた複素射影空間の場合の研究で開発したBiran氏のスペクトル系列に基づく計算手法が複素2次超曲面にも有効に機能した(項目3)。 項目2について、複素ベクトル空間の偶数次元部分空間の系列として得られる複素旗多様体の中に四元数部分空間の系列で定義される実形がある。これと合同な二つの実形の交叉の構造が昨年度の終わりに得られたが、これに関して、酒井氏、田崎氏との共著論文を作成し、Springer Proceedings in Mathematics & Statisticsに発表した。この結果を基盤として、今年度は一般の設定で二つの実形が合同な場合、次いで合同とは限らない場合にはある適切な条件の下で、離散的な交叉の記述がLie群論的に得られた。特に、二つの実形が合同とは限らない場合には、井川氏がHermann作用の軌道を調べるために導入した対称三対の概念で交叉が表現できたことは重要である。 項目4は、当初の研究計画では想定していなかった。この成果については小野氏の貢献が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1について、研究成果が一応の段階に到達したため、27年度は早急にプレプリントの改訂を終え、論文の投稿を急ぐ。 項目2について、26年度までの研究により、複素旗多様体の二つの実形の離散的な交叉が対蹠集合で表され、そのLie群論的な記述もはっきりした。27年度は、この交叉の対蹠性を利用して、研究計画の主眼である実形の対のFloerホモロジーの計算を完了させる。 項目3については、入江を提案者、大仁田氏を代表者とするRIMS共同研究「Floer cohomology of the Gauss images of isoparametric hypersurfaces」(期間:2015年7月27日から31日)が既に採択されており、26年度に得られた成果を論文にまとめる準備が整っている。会期中には更なる課題についても検討する。
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