2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740055
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 竜輝 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (60527886)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流,ドイツ |
Research Abstract |
今年度は、申請時点で得られていたPoisson媒質中でのBrown運動(放物型Andersonモデル)の局在に関する結果の精密化と、待ち時間を持つランダム媒質中のランダムウォークの大偏差原理に関する研究を主に行った。まず前者については、前年度までにBrown運動が通常より原点に近い領域に留まる劣拡散的な挙動をすることを示していたが、さらに詳しくスケール極限を調べていわゆるOrnstein-Uhlenbeck過程に収束することを証明した。同種のモデルに対しては先行研究もあったが、ここでは異なる極限過程が得られており、さらにその背景となるBrown運動とランダム媒質の相互作用の描像も明確にできたので、このモデルについてはほとんど最終的な結果にいたったと考えている。 次に待ち時間を持つランダム媒質中のランダムウォークの大偏差原理については日本大学の久保田直樹氏と共同で研究を進め、媒質に関するやや強い独立性の条件のもとではあるが初めて多次元のCramer型の大偏差原理を示すことができた。ここでの手法はいくつかの先行研究を組み合わせたものであり非常に斬新という程ではないが、待ち時間という新しいランダムなパラメータを含めたことにより、その影響について興味深い結果を得ることができた。具体的には各点で待ち時間をランダムにすることはランダムウォークを加速する効果を持つが、一方で空間的に非一様な待ち時間の分布を与えることはランダムウォークを減速させる効果を持つ。さらにいわゆるレート関数の遠方での漸近挙動についても考察し、それが最速浸透問題と自然な関連を持つことも示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放物型Andersonモデルの研究については、Poisson媒質の研究が順調に進展しほぼ最終的な結果にいたったが、一方でGauss場など他の興味ある媒質に関する研究においては新たな困難が生じることが分かったため、想定以上に時間がかかっている。しかしいくつか可能性のある解決策を見出しているので、次年度以降はそれらが適用可能かどうか検証することに務める予定である。ランダム媒質中のランダムウォークの大偏差原理については、抽象理論としてはかなり満足の行く結果が得られたと考えている。また一次元の場合にはレート関数のより具体的な挙動を調べることができそうな感触を得ており、次年度に取り組むべき新しい問題も発見できたという意味で、順調に研究は進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず放物型Anderson模型については次の二つの方向を考えている。 1.Gauss場をポテンシャルとする場合:この場合Poisson媒質と違ってBrown運動とランダム媒質が同じスケールにあることが分かり、そのことが大偏差原理の応用において重要ないわゆる「局所化」の議論に困難を生じさせる。しかしBolthausenとSchmockによる異なる文脈での研究で類似の困難を回避する方法が示されており、それを今回のモデルに適用しようとすることが一つの自然な方針である。Bolthausen氏は平成25年11月に東京に滞在する予定であるから、議論の機会を持ち可能性を検討する。 2.最近KoenigとSchmidtは放物型Anderson模型において拡散過程を加速するとどういう影響が出るかを研究した。これは実はランダムポテンシャルを小さくすることとも直接関連しており、局在の強さを測る意味で興味深い方向である。そこで年度の早い時期にKoenig氏を招聘して、今後の方向について議論する予定である。とくにポテンシャルを十分小さくすれば局在が崩れて拡散的な挙動が復活するのではないかと考えている。 次にランダム媒質中のランダムウォークの大偏差原理についてはランダムな待ち時間の影響をより詳しく調べることに興味があり、とくにドリフトつきランダムウォークが待ち時間によってどのように減速させられるかを調べたい。これについてはドリフトつきランダムウォークの滞在時間に関するいわゆるレベル2の大偏差原理が必要であり、それ自体興味ある対象なのでその研究から始める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず年度の始めにWeierstrass研究所のWolfgang Koenig氏を京都大学に招聘し、研究打ち合わせを行う。また5月30日から6月4日はIndian Statistical Instituteで開催される研究集会New Directions in Probability,6月24日から28日は上海で開催される研究集会The Second Pacific Rim Mathematical Association (PRIMA) Congressに参加して成果発表及び情報収集を行う予定である。以上の招聘及び海外出張が今年度中に決定していたことと、申請者自身が8月に異動したことに伴って予定していたいくつかの国内出張が必要なくなったことから研究費の一部を次年度に使用することとした。 次年度は上記の他に5回程度の成果発表のための国内出張と、研究推進に必要な参考文献の購入を予定している。
|
Research Products
(8 results)