2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740055
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 竜輝 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (60527886)
|
Keywords | ランダム媒質 / アンダーソン模型 / ランダムウォーク |
Research Abstract |
本年度は(1)アンダーソン模型の無限体積極限におけるスペクトルの揺らぎ,(2)ランダム媒質中の高分子の自由エネルギーの零温度極限,(3)待ち時間を持つランダムウォークが減速する確率の評価,について主に研究を行った.(1)については,Marek Biskup氏(UCLA)およびWolfgang Koenig氏(WIAS)と共同で,ラプラシアンにランダムポテンシャルを加えたいわゆるアンダーソン模型の固有値について,平均値の周りでの揺らぎが正規分布に収束するという結果を示した.しかし今のところポテンシャルにやや強い条件を課しているので,それを一般化することは今後の課題である.なおこの問題については,少し異なる設定で小沢真氏による結果もあるが,そこでの議論は摂動論にもとづく解析的なもので,我々はそれとは全く異なる確率論的な議論を用いている.(2)についてはFrancis Comets氏(Paris 7)及び吉田伸生氏(名古屋大学)と共同で,非有界なジャンプを許したあるdirected polymerのモデルについて,その自由エネルギーが零温度極限において連続であることを示した.またランダム媒質のパラメータを動かす極限についても研究し,興味深い結果が得られている.(3)については前年から引き続き久保田直樹氏(日本大学)と共同で研究を進めており,とくに待ち時間の分布が末尾で多項式減衰する場合には精密な評価が得られることが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に研究計画として挙げていたGauss型媒質などを伴う放物型アンダーソン模型に対する局在は,予期せぬ技術的な困難が生じてやや停滞している.一方で無限体積極限における固有値の揺らぎやdirected polymerの零温度極限など,当初は予定していなかった問題について大きく進展させることができたので,総合的には順調に進んでいると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず4月に共同研究者であるUCLAのBiskup氏を訪問し,アンダーソン模型の固有値の揺らぎに関する研究をさらに進める.また同氏の最近の結果であるアンダーソン局在の有限体積における特徴付けについても情報交換を行い,とくに現在は取り込めていない有界なランダムポテンシャルの場合への拡張の可能性についても議論する.これは当初研究計画に述べた形とはわずかに異なるが,アンダーソン局在の定量的理解という最も重要な目標に繋がるものである.またdirected polymerの問題については,現在考えているモデルについては結果をまとめて出版を目指すが,他にも考察すべきより自然な設定(連続時間のランダムウォークやBrown運動を高分子のモデルとするなど)が多数あるので,引き続きComets氏,吉田氏と連携して研究を進める.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初想定していた以上に所属機関で開催される研究集会が多くなったために,出張旅費が予定を下回り次年度使用額が生じた. 2013年度は複数の問題について共同研究を行い一定の進展を得た一方,その延長線上に残された問題もある.2014年度は前年度以上に成果発表や研究連絡の頻度が多くなるため,繰り越した分は旅費として使用できる見込みである.
|
Research Products
(9 results)