2014 Fiscal Year Research-status Report
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24740055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 竜輝 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (60527886)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ランダム媒質 / 高分子模型 / 均質化 / 中心極限定理 / アンダーソン模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の二件の研究を行った。 1.Anderson模型の固有値の均質化:Anderson模型とはランダムなポテンシャルを伴うSchrodinger作用素である。それを有界な領域に制限した時の固有値の挙動を知ることは、ランダムな媒質における熱の伝播を理解する上で重要である。前年度から行ってきたMarek Biskup, Wolfgang Konig両氏との研究を更に深化させ、ポテンシャルの分布が非有界な場合でも適切なモーメント条件のもとでは連続極限への収束および揺らぎがガウス分布に収束することを示した。なお仮定したモーメント条件はある意味ではそれ以上改善できない最良のものであることも分かった。 2.ランダム媒質中のポリマーの自由エネルギー:ランダム媒質の中のポリマーをランダムウォークを使ってモデルにし、その自由エネルギーの連続性などをFrancis Comets, 吉田伸生,中島秀太らと共に調べた。とくにランダムウォークに非有界なジャンプを許した設定では零温度極限でも連続性があることを示すことができた。この種の問題では自由エネルギーの存在を劣加法エルゴード定理を使って確立するのが常道であるが、最近になって零温度に対応するモデルではその適用が困難な例がいくつも見付かっている。本研究での手法はとくに零温度での自由エネルギーの存在が有限温度の場合からの極限移行によって導ける場合があることを示しており、新しい研究の方向を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度から今年度に書けての研究は、研究計画とはやや異なる方向に進んでいるが、Anderson模型においてはポテンシャルの影響を小さくしたときに何が起こるかを調べていることになるので、定量的理解を進めるという方針には合致している。またランダム媒質中のポリマーのモデルも時間依存するポテンシャルを伴うAnderson模型と自然に対応がつくため、研究課題と密接に関連している。これらについて、当初は予期していなかった成果があがっており、とくにそこから今後の研究課題とすべき興味深い観察も数多く得られていることから、計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Anderson模型の均質化は空間の次元とモーメント条件に依存していろいろな状況が現れうることが観察され、想像以上に豊富な内容を含むモデルであることが分かってきた。その観察に厳密な証明を与えることは今後の課題であり、とくにモーメント条件が弱いときに中心極限定理とは異なる極値分布理論の枠組みに入ることは、局在/非局在の転移と関連すると思われる重要な問題であり、近年のAnderson模型のスペクトル順位統計の結果を参考にしつつ研究を進める。ランダム媒質中のポリマーの問題は、ランダムウォークのジャンプが有界な場合や連続時間の場合が未解決であり、この方向への拡張を検討する。特に連続時間の場合は、現在は路の幾何的な変形に依っている議論を、測度の変換に置き換えることが解決につながると考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張において、先方から滞在費の援助を申し出られたことが主な理由である。2015年度に伊藤清生誕百周年事業と関連する国際研究集会を企画しており、海外から研究者を招へいする予定もあることから、この申し出を受けて次年度使用とすることにしたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年7月に京都で国際研究集会「New Trends in Stochastic Analysis」を企画している。この研究会に招へいするゲストのうちBrazil IMPA所属のHubert Lacoin氏の滞在費などを支出する。これと年度後半に一度海外出張を予定していることが主要な支出である。この他に8月に東北大学で開催される「日独共同研究集会」、12月に岡山で開催される「確率論シンポジウム」への国内出張も予定している。
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Research Products
(8 results)