2012 Fiscal Year Research-status Report
離散可積分系による数列のハンケル変換理論の構築と組合せ論への応用
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24740059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上岡 修平 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70543297)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数理物理 / 可積分系 / 組合せ論 / 行列式 / Aztec diamond / 非交叉格子路 / タイリング |
Research Abstract |
本研究の目的は, 数列の行列式変換の一つであるHankel変換に対して, 離散可積分系と格子路による計算理論を構築することである. 離散戸田方程式やRII格子方程式に代表される戸田型の離散可積分系は, Hankel行列式等により記述される厳密解を持つ. これら行列式解を持つ離散可積分系, 特にその行列式解に対して重み付き格子路による組合せ論的な解釈を与える. その帰結としてHankel変換の計算可能な数列のクラスおよびその計算法を, 重み付き格子路および系の時間発展方程式を用いて具体的かつ系統的に定式化することが本研究の主たる目的である. さらに理論の応用として数え上げ組合せ論の問題を考える. 具体的には行列式および格子路に関連して非交叉格子路やドミノタイリングを扱い, それらに対して可解な数え上げ問題を構成する. 本年度は離散戸田方程式およびその拡張版である非自励離散戸田方程式に着目し, それらの持つHankel行列式解の構造を組合せ論の視点から綿密に調べた. 特に離散戸田方程式の初期値問題について考察し, 初期値問題の厳密解を記述するHankel行列式の具体値が, 初期値により重み付けられた正方格子上の非交叉格子路の重み和の形で組合せ論的に表示可能であることを示した. さらにその結果を非自励離散戸田方程式の場合にも拡張した. 離散戸田方程式の時間発展が正方格子路を用いて解釈可能であることはViennot (2000)により既知であった. 本年度の結果は組合せ論におけるViennotの結果を可積分系の視点から整理, 拡張するものである. 特に厳密解を記述するHankel行列式に対して非交叉格子路による組合せ論的な表示を与えた. これにより離散戸田方程式を用いて構築されるHankel変換理論が, どのような種類の数え上げ問題に応用可能であるかが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は次の二つに大分される: (目的1)離散可積分系と格子路によるHankel変換理論の構築. (目的2)非交叉格子路やAztec diamondに関する可解な数え上げ問題の構成. 初年度の当初計画は離散戸田方程式, 離散ハングリー戸田方程式, RII格子方程式などの行列式解を持つ種々の離散可積分系に対して(目的1)を達成することであった. 具体的には, まず離散可積分系に対して, 付随する直交関数や連分数などを援用して, その構造を特徴付ける重み付き格子路を見出す. そしてHankel変換の計算可能な数列のクラスを得られた重み付き格子路の言葉で定式化する. Hankel変換の計算には対応する離散可積分系の時間発展方程式やその双線形形式を用いる. 初年度では離散戸田方程式に対して(目的1)が達成された. さらに当初計画を越えて, 離散戸田方程式の拡張版である非自励離散戸田方程式に対しても同様の理論が構築可能であることを示した. また次年度の計画を先取りする形で(目的2)も部分的に達成した. 具体的には離散戸田方程式の厳密解を記述するHankel行列式に対して非交叉格子路による組合せ論的な表示を与えた. この結果は解の表示に用いた非交叉格子路に関して, その可解な数え上げ問題が, 離散戸田方程式の厳密解から構成可能であることを意味する. 離散ハングリー戸田方程式やRII格子方程式などの他の離散可積分系に対しては(目的1)は完全には達成されていない. ただし離散戸田方程式の研究において用いた考え方, 手法は, これら未達成の課題に対しても適用可能である. 特に初年度において得られた非自励離散戸田方程式に関する知見は, 同様の非自励系であるRII格子方程式の解析において核心的な役割を果たすと期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は次の二つに大分される: (目的1)離散可積分系と格子路によるHankel変換理論の構築. (目的2)非交叉格子路やAztec diamondに関する可解な数え上げ問題の構成. 次年度では離散戸田方程式以外の行列式解を持つ離散可積分系, 特に離散相対論戸田方程式とRII格子方程式に対して(目的1)を達成する. さらにそれらの結果も併せて(目的2)も達成する. 特に(目的2)においては, 離散相対論戸田方程式に基づくHankel変換理論の応用として, Aztec diamondのドミノタイリング問題に関する次の研究を実施する. 離散相対論戸田方程式やその双線形形式およびその特殊解から, Aztec diamondの新しい可解ドミノタイリング問題, つまり厳密解を具体的に書き下すことができる問題を, 厳密解込みで, 構成する. 具体的な計算手法としては次の二つを採用する: (a)順アプローチ: まず離散相対論戸田方程式の初期値, パラメータ変数値を決めて, 考察対象とするタイリング問題を一つ固定する. 次に対応するHankel変換を計算し, その値からタイリング問題の厳密解を求める. (b)逆アプローチ: まず離散相対論戸田方程式の特殊解を一つ固定する. 次に特殊解に含まれる初期値, パラメータ変数値から対応すべきタイリング問題を同定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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