2012 Fiscal Year Research-status Report
微分作用素環のグレブナー基底を用いた積分アルゴリズムの応用
Project/Area Number |
24740064
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中山 洋将 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00595952)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | グレブナー基底 / D加群 / 計算代数 / 超幾何関数 |
Research Abstract |
Fisher-Bingham 分布の正規化定数に現れる Fisher-Bingham 積分というものがある. Fisher-Bingham 積分は球面上で exp 関数を積分するようなものであり, 複数のパラメータを持つ. このパラメータを動かし積分値の極小値を求める方法の一つとして, "holonomic 勾配降下法" というものがある. これは目的関数の満たす微分方程式系から最適値を求めるもので, 2011 年の我々の論文において提案された手法である. この論文では, 2 次元の Fisher-Bingham 積分までしかこの手法を適用することはできなかった. 積分の満たす微分方程式系を Pfaff 系と呼ばれる 1 階の微分方程式系に変形する計算が非常に大変であることによる. この計算には計算機を用いているが, 2 次元より高次元のものについては計算が困難あった.そこで, この変形を理論的に行うことにより, さらに高次元 (7 次元まで) Fisher-Bingham 積分まで "holonomic 勾配降下法" を適用することが可能になった. ("Holonomic Gradient Descent for the Fisher-Bingham Distribution on the $n$-dimensional Sphere" 投稿中) 一般の n 次元の Fisher-Bingham 積分の満たす微分方程式系について, holonomic rank (解空間の次元にあたるもの) は知られていなかった.この微分方程式系のグレブナー基底を求めることで holonomic rank を決定することができた.("The Holonomic Rank of the Fisher-Bingham System of Differential Equations" 投稿中)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つである, "holonomic 勾配降下法" を高次元の Fisher-Bingham 積分に適用して最適値を計算するということについて, 一般の n 次元の Fisher-Bingham 積分の満たす 微分方程式系について Pfaff 系の導出, グレブナー基底の導出, holonomic rank の計算ができるようになり, 7 次元まで実際に "holonomic 勾配降下法" を用いて最適値を求めるプログラムが作成できた. これに関して 2 編の論文を作成し投稿中である. 目的の一つである, 微分作用素環のグレブナー基底計算を効率的に行う手法の開発について,多項式環ではよく知られている Buchberger の useless S-pair criterion の微分作用素環版を見つけることができ, これを利用して Fisher-Bingham 積分の満たす微分方程式系のグレブナー基底, Lauricella 超幾何関数の満たす微分方程式系のグレブナー基底を手計算により導出することができた. これについて 1 編の論文を作成した(accept 済).
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Strategy for Future Research Activity |
Lauricella 多変数超幾何関数 F_A, F_B, F_C の満たす微分方程式系について, グレブナー基底を理論的に計算することができた. ここで用いた手法を適用できるような微分方程式系を見つけ, holonomic 性の証明, 特性多様体や特異点集合の計算などを行う. 例えば適用できそうな微分方程式系として, Horn 超幾何関数や Appell-kampe 超幾何関数などの多変数超幾何関数の満たす微分方程式系などが考えられる. また Lauricella 超幾何関数 F_D の満たす微分方程式系のグレブナー基底について予想があるので, その証明を行い, グレブナー基底を使って特異点集合, Pfaff 系の計算などを行いたい. 微分作用素環のグレブナー基底計算を効率的に行うための手法として, 微分作用素環における Buchberger の useless S-pair criterion を見つけたが, 今まで主に手計算を行う際にこれを用いていた. そこで実際にプログラムにこの判定法を組み込み, どれほど高速になるかを調べ, 具体的な微分方程式系のグレブナー基底計算に用いる. "holonomic 勾配降下法" の離散版を開発する. 具体的にいうと, パラメータを含む和, 積分を目的関数として, 目的関数の満たすパラメータについての差分方程式系を導き, その差分方程式系から目的関数の最適値を求めるというものである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次の研究集会などに出席し, 研究成果を発表する予定である.日本数式処理学会第 22 回大会 (防衛大学校), グレブナー若手集会 (信州大学), 研究集会「数式処理研究と産学連携の新たな発展」(九州大学), RIMS研究集会 数式処理 (京都大学数理解析研究所), 超幾何方程式研究会(神戸大学), Risa/Asir conference (神戸大学) など. 次の関連分野の研究者のもとを訪問または招いて, 研究打ち合わせなどを行う. また計算代数セミナーなどを行う予定である.西山絢太 助教 (静岡県立大学), 小原功任 准教授 (金沢大学), 清智也 講師 (慶応大学) など. プログラムの開発, 計算実験を行うために計算機を購入する. 可換環論, グレブナー基底, 多面体, 整数計画問題, 多変数超幾何関数などに関する書籍を購入する.
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