2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740066
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 賢太郎 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20528351)
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Keywords | 数理モデル / 振動子系 / 真正粘菌 / パターン形成 / ロコモーション |
Research Abstract |
真正粘菌は内部のアクチンミオシンの振動収縮により内部圧力を変化させており,粘菌内部の原形質は圧力勾配に従って移動している.昨年度の成果である粘菌の振動収縮モデルの応用例として,内部の圧力に駆動されて先端部が前へ押しやられていくという真正粘菌特有の移動様式の数理モデルを構築した. 空間的に離散化した粘菌を一列に並べた系について,境界に位置する要素の圧力が閾値を超えたときは原形質が端から押し出されることにより粘菌の存在する領域が広がるという条件,さらに粘菌のゾルゲル変換に由来する長い時間スケールのダイナミクスをモデルに取り入れた.このシミュレーションの結果,実際の粘菌を通路の中央に置いて観察した結果と同様に,「一方向にのみ進行していく場合」と「両方向に同時に進行していく場合」の両方の振る舞いを示すことができることがわかった.また,興味深いことに「一方向にのみ進行して行く場合」において,身体の一部が通路の端に到達したときに,いままでと反対方向に動き出すという振る舞いを示し,これと同様の振る舞いが実際の粘菌でもみられることがわかっている.本数理モデルからこの現象に対する一つのシナリオを提唱することができた. 明示的に方向転換することを数理モデルに盛り込んだわけではないにもかかわらず,実際の粘菌と同様な「合目的性をもった全体の振る舞い」を再現できたことは意義深く,この結果については,国内外の研究会で発表をしており,現在論文を執筆中である. また,二次元のランダムメッシュ上での厚み振動モデルについても研究を行い,ノードに繋がっているエッジの数が多い程,そのノードの厚み振動は速くなりやすく,結果的にそのノードを中心とした中心波を生み出しやすいといことが分かっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
厚み振動のモデルに加えて,移動を行うための効果まで取り入れた数理モデルが完成した.当初の計画では,ネットワーク状に広がった粘菌についての研究を進める予定であったが,そちらの研究よりも本研究課題の最終目標である「原生生物の合目的性を持った振る舞いの仕組みの理解」のための良い例として,通路内を移動する粘菌の問題に思い至り,そちらを優先的に研究することにした. 真正粘菌の「行き止まりに突き当たると,自発的に別の方向に進みだす」という性質は,一見それほど大した機能には感じられないかもしれないが,効率的な餌の探索という観点から考えると,粘菌の生存戦略にとって重要な機能のひとつであるといえる. 「合目的性をもった全体の振る舞い」が局所的な系同士の協調で生まれるかの数理的な仕組みを明らかにすることが本課題の目標であるので,方向転換という機能の数理的機構について提案できたことは意義深い.そういった意味では研究は順調に伸展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
粘菌の数理モデルの枠組みは,ほぼ完成しているといえる状況なので,ネットワーク上で振動の様子や,二次元的に広がりながら進んでいく粘菌の様子を高速な計算機(Mac Pro)を用いて調べて行く.また,モデルの妥当性を検証するために実際の生物を用いた実験結果との比較は行っていくつもりであるのだが,そのためには二次元的に広がる粘菌の様子をどのように定量化して実験結果と比較するかという問題がある.このような指標作りにも取り組んでいくため,今後も実験の分野の専門家とは連絡を取り合いながら,研究を進めていきたい. また,本課題の最終年度ということで,研究結果を積極的に外部に向けて発表していくこと,特に論文としてまとめて仕上げていくということに注力するつもりである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費を抑えることができた.当初の予定では,もう一回程度海外の研究会で発表を行うはずだったのだが,研究の進捗状況を鑑みて,次年度に研究成果の発表を行うことに決めたから. 研究成果の発表の為の出張費として利用する.
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