2012 Fiscal Year Research-status Report
グロス・ピタエフスキー方程式のダイナミクスとその周辺
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24740079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福泉 麗佳 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00374182)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 解析学 / 偏微分方程式 / 確率解析 / 変分法 / BEC |
Research Abstract |
グロス・ピタエフスキー方程式にホワイトノイズが摂動に加わった方程式について, 渦のダイナミクスの解析をするため, 当初計画していた調査すべき項目に関して, 得られた研究結果は以下のとおりである. 1. ノイズが伴わない場合, グロス・ピタエフスキー方程式に対する巻き数1の渦の軌道安定性は, 渦と同じ構造を持つ摂動に関して軌道安定であることがわかった. 2. トーマス・フェルミ近似により形式的に導出される, 同値な方程式である複素ギンツブルグ・ランダウ方程式の検討を行い, 確率項を伴った複素ギンツブルグ・ランダウ方程式の渦解を含む解の存在を証明した. 3. 準古典近似による波動関数の解析を, 確率項を伴わない場合の「非線形」方程式に対する結果と, 確率項を伴う「線形」方程式に対する結果を考慮しながら, 数値計算を行った. ノイズによる Caustic の消滅のような具体的な変化は期待できないことがわかったため, ノイズの効果が見え, しかも非線形効果も見えるような解析手法を調査することになった. 4. 準古典近似の考え方を用いて, 周期的光学格子にトラップされているBEC波動関数の離散Schrodinger方程式による近似を正当化した. 離散 Schrodinger 方程式による近似を応用して, 粒子間相互作用が斥力の場合でも, 波動関数の局所化が現れる場合があることを数学的に証明した. この成果については, 現在, Andrea Sacchetti 氏との共著「Stationary states for nonlinear Schrodinger equations with periodic potentials」として投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請をした当時考えていた研究計画に関しては, 予想をしていた結果がみえず, 試行錯誤の上多くの方法を試し続けたのが今年度となった. 今年度でかなり方向性は見えたと思うが, 申請をした項目の中でインパクトある結果を残すという点では満足のいかない達成度である. しかしながら, 準古典近似を用いる手法を研究しながら, 副産物として, 周期ポテンシャルを伴うグロス・ピタエフスキー方程式の離散近似を数学的に証明し, 現実に物理実験で用いられているポテンシャルを含むモデルについての数学的正当化に成功したことは, この研究課題の物理学的動機に付随する成果の一つと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 安定な渦に対するノイズの影響を変調パラメータ解析により計算する. 変調パラメータがどのくらい長い間意味を持つか, ノイズの影響を受けながらも渦の初期状態がどのくらいの間保たれるのかを, 大偏差原理とそれに付随する非線形 Schrodinger 方程式の制御問題を使って解決を目指す. 2. 複素ギンツブルグ・ランダウ方程式において変分的手法と確率解析を組み合わせ, ノイズの影響を含んだ渦点のダイナミクスを, 特異極限においてランダムな力学系の解析に帰着させる方針で進む. 当面は渦点のダイナミクスの平均挙動をまず考察する予定である. 3. 準古典近似による波動関数の解析を平成24年度の結果をもとに, この分野の専門家である眞崎聡氏(学習院大学)と議論する. Wigner 測度に着目し, ランダムネスを伴った場合にWigner 測度の満たす非線形極限方程式がどのように変化するか調べる. 4. double well や 周期的なポテンシャルを伴う非線形 Schrodinger 方程式においては, これまでの研究により, 強い非線形効果によって波動関数のトンネル効果が抑制され, ある1つのポテンシャルの中に局在化されることがわかっている. そこで, 弱い非線形性を持つ場合はどうなるか, 例えばノイズを加えることで局在化が推進されるかどうか考察予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グロス・ピタエフスキー方程式の数値計算を行っている Christophe Besse 氏 (Lille 第1大学・フランス)を招聘し, 数値スキームについて連続講義をしてもらう. 大偏差原理の専門家 Annie Millet 氏(Paris 第1大学・フランス)を招聘し, 最新の確率偏微分方程式に関する手法を議論する. Wigner 測度の準古典極限に関して専門家の眞崎聡氏(広島大学)を招聘し討論を行う. 渦の解析の共同研究者である Anne de Bouard 氏(Ecole Polytechnique・フランス)と Eric Gautier氏(ENSAE・フランス)を招聘または訪問する予定である. 確率論関連の本を10冊, PCを数値計算のために購入する予定. 定期的に東北大学で「青葉山勉強会」を開催し, 研究計画内容に関連する知識を持つ国内研究者に講演してもらう.
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Research Products
(5 results)