2013 Fiscal Year Research-status Report
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24740080
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針谷 祐 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20404030)
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Keywords | 確率解析 |
Research Abstract |
平成25年度は主に以下の二つの研究を行った. 1. 統計力学,とくに勾配型界面モデルの解析で重要となるBrascamp-Liebのモーメント不等式について,Skorokhodの埋め込みと確率解析を組み合わせたその簡明な証明を与えるとともに,この手法の応用として分散による誤差評価および非凸なポテンシャルをもつ場合への拡張を導いた.本研究成果は学術誌に投稿済みであり,プレプリントアーカイブarXiv.orgにもアップロードを行った(プレプリント番号arXiv:1309.2727 [math.PR]). 2. 濱名裕治,松本裕行両氏により近年得られたBessel過程の到達時刻に関する末尾確率の漸近評価について,確率測度の列の弱収束に基づくより直接的な手法を用いてその主要項を再現するとともに,同様の方法によってBessel過程がその最小値を達成する時刻の末尾確率や関連する期待値の漸近挙動を導出した.また,濱名-松本とは異なる議論により誤差項の漸近評価の改善も併せて行った.Bessel過程は確率論においてBrown運動と並ぶ基本的かつ重要な研究対象であり,かつBessel過程のもつ指数が半整数のとき,本研究は,対応する次元のユークリッド空間において原点中心の球体を除いた領域上のDirichlet境界条件付き(つまり境界上で絶対零度とする)熱方程式がもつ熱核の,空間変数に関する積分量の漸近挙動をより詳細に調べることに対応する.本研究成果は学術誌に投稿済みであり,arXiv.orgにもアップロードを行った(プレプリント番号arXiv:1403.0716 [math.PR]).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」欄で挙げた研究内容の一つ目は交付申請時の研究計画の3年次分に関連するものであり,2年次までの研究遂行の度合いとすれば当初の予定通りとは現時点では評価出来ない.しかしながら上記の研究により得られた結果は,自身の知る範囲ではこれまで発見されていなかった新しいタイプのものであり,BrascampとLiebによるオリジナルの証明法も含め,従来の手法による証明ではこのような誤差評価を得るのは困難であると思われる.確率解析の基本的な公式(いわゆる伊藤-田中の公式)の適用によりそのような非自明な結果が得られたことは,確率解析的手法の有用性の一例を与えるとともに研究計画の立案時には想定していなかったことでもあった.また,二つ目の研究内容に関しては,同様の手法がドリフトをもつBessel過程やより一般の非負かつ過渡的な拡散過程に適用できる可能性があり,対応する熱方程式(より一般に拡散方程式)の基本解の解析への応用が期待できるため,本研究成果も意義あるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究課題に関連する書籍や最新の研究結果等の文献資料の精査を行い,かつ当該分野の研究者との連携や情報の共有を通じて研究を推進する.「研究実績の概要」欄で挙げた二つ目の研究内容との関連で具体的に述べると,Bessel過程の指数が1,あるいはそれよりも真に大きいか真に小さいかに応じて誤差項の漸近挙動がもつ指数への依存性が変化するものと考えている.この予想の成否の確認のため濱名-松本の2013年の結果およびT. Byczkowski,J. Malecki,M. Ryznarの2013年の結果を精査する.前者ではBessel過程の到達時刻の分布が具体的に与えられている.それは第3種変形Bessel関数の零点を用いた複雑なものとなる.一方後者では到達時刻の確率密度関数の上と下からの一様評価が与えられている.これらの結果を援用することにより予想の解決を試みる.これらの研究者との連携や知見の共有を行うことによる研究計画遂行上のフィードバックが併せて期待できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,本年度までの研究を効率的に推進したことにより生じたものである. 次年度使用額は,平成26年度請求額とあわせ平成26年度の研究遂行に使用する.国内外の研究者と意見を交換し,かつ研究成果を発表することによって最新の知識および知見を共有することは,本研究の遂行上重要である.そのための旅費として使用する.また,確率論関連図書と解析学関連図書を継続的に揃えることと併せ,成果発表資料作成,情報収集および研究連絡を円滑に行うためにコンピューター関連の設備を適宜更新することも研究遂行上必要であり,それらのための物品費としても使用する計画である.
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Research Products
(2 results)