2012 Fiscal Year Research-status Report
曲がった時空上の場の量子論のスペクトル解析とその応用
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24740084
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 章斗 信州大学, 工学部, 助教 (70585611)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換(フランス) / スペクトル / 自己共役作用素 / ヒルベルト空間 / 場の量子論 / グラフ |
Research Abstract |
本年度は,本研究の目的である空間の幾何学的な構造がその上で定義される模型の基底状態や平衡状態の性質とどのように関係しているかをより深く理解するために,1粒子ハミルトニアンのスペクトルの性質に着目した。簡単のため,離散化された模型を考え,グラフ上を運動する粒子のスペクトルとグラフの変形との関係を調べた。その結果,以下に述べるいくつかの知見を得ることができた。 まず,d次元の格子をグラフと考え,それに次数1の頂点を付加することで新しいグラフをつくることを考える。このようなグラフの上を運動する粒子の模型は超対称的構造を持つことがわかる。d次元の格子の場合は,超対称的ハミルトニアンに基底状態は存在しないが,次数1の頂点を付加してグラフを変形することで,基底状態が現れたり消えたりする。また,スペクトルギャップの有無も頂点の付加の仕方で変化する。このような模型の超対称的ハミルトニアンの基底状態が存在するための,頂点の付加に関する条件を導いた。また,基底状態をもつ場合には,超対称的ハミルトニアンのスペクトルギャップの大きさに関する下からの評価を得ることができた。さらに,この評価が最良となるような具体例も構成することができた。 離散化された模型に関して得られた上述の結果は,連続的な模型における背景時空の幾何学的構造と基底状態や平衡状態の性質との関係を調べるための予備的検討として,次年度の研究に活かされることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」を達成するための準備段階として,離散的な模型に関する成果が得られている。その成果は研究集会等で報告され,一部は論文として投稿されている.また,連続的な模型に関しても,海外の研究者(パリ11大学のC. Gerard氏やトゥーロン大学のA. Panati氏)と情報を交換するなどして,目的達成に向けた研究が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の離散的な模型を用いた予備的検討の結果を踏まえ,連続的な時空における場の量子論の模型のスペクトルに関する研究をすすめる。必要があれば,Gerard氏やPanati氏らとも意見交換を行い,研究に役立てる。また,これまでに得られた成果は,学会等発表したり,論文にまとめたりする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じた。次年度使用額は,本年度の研究成果を発表するために使用する旅費等に充てる。
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