2013 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式の初期値問題に対する空間周期的な解の存在と大域挙動
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24740086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 展 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (90610072)
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Keywords | 非線形分散型方程式 / 初期値問題の適切性 / 周期境界条件 / 無条件一意性 |
Research Abstract |
本研究では非線形分散型方程式の周期境界条件下での初期値問題について,関数解析的な手法により適切性や解の挙動などを調べている.初期値のクラスが広い場合や非線形項に微分が含まれる場合などは,解のクラスを適切に制限した上で解くことがしばしば効果的であるが,その場合には自然な解のクラス(例えば初期値と同じ空間に値を取る連続関数全体)における解の一意性,すなわち無条件一意性が成り立つかどうかは非自明な問題である.無条件一意性は,構成方法によらず同じ解が得られることを保証するための根拠となる重要な性質である. 平成25年度の成果として,べき乗型の非線形項を持つ非線形シュレディンガー方程式(NLS),空間1次元で典型的な3次の非線形項を持つ微分型シュレディンガー方程式(DNLS),ベンジャミン・オノ方程式(BO)および修正ベンジャミン・オノ方程式(MBO)について,広いクラスの初期値に対する解の無条件一意性が得られた. 周期境界条件下における無条件一意性については,常微分方程式における正規形(Normal form)への帰着の考え方を利用した証明により,KdV方程式や最も単純な1次元で3次の非線形項を持つNLS等で先行結果があった.まずNLSに対して,数論的な考察を用いて先行結果での議論を精密化し,空間次元・非線形項の次数を一般化した.次にDNLSについて,よく知られているゲージ変換とNLSでの手法を組み合わせることにより結果を得た.さらにBOとMBOに関しては,知られているゲージ変換が非常に複雑なため,変換後の方程式がより扱いやすいものとなるようゲージ変換を修正した上で正規形の議論を適用した. 上記の成果においては,フーリエ制限ノルム法に代表される従来の適切性証明の手法では得られない無条件一意性を示している反面,証明の中心となる多重線形評価式の導出の際はフーリエ制限ノルム法に近い議論を行っているため,多くの分散型方程式への応用が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で研究を予定していたザハロフ方程式については扱わなかった反面,初期値に滑らかに依存するように解を構成することができないことがわかっているベンジャミン・オノ方程式および修正ベンジャミン・オノ方程式について結果が得られたので,平成26年度に予定していた研究の一部を前倒しで行った形になった. また,『研究実績の概要』でも述べたように,無条件一意性の証明で本質的となる可微分性の回復のアイデアは従来のフーリエ制限ノルム法と共通する部分が多いため,フーリエ制限ノルム法によって(条件付き一意性を含む)適切性が得られているザハロフ方程式に対しても同様の論法により無条件一意性を示せる可能性が高い. 以上の理由から,総じて研究計画は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,前年度までに取り組まなかったザハロフ方程式について研究したい.特に多次元の場合には,約数の個数・曲面上の格子点の個数の評価といった従来用いられてきた数論の道具と可微分性の回復の議論を結びつけることが現段階では上手くいっておらず,可微分性が上がるメカニズムをさらに検証する必要がある. 最近ではザハロフ方程式に確率項を加えてノイズの効果を持たせたものや,高階微分の項を加えて量子効果を考慮に入れた修正ザハロフ方程式なども,より実際の現象に忠実なモデルとして注目されており,これらの問題についても取り組みたいと考えている. 平成27年度の研究計画については交付申請書に記載のとおりである.
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