2014 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式の初期値問題に対する空間周期的な解の存在と大域挙動
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24740086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 展 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (90610072)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形分散型方程式 / 初期値問題 / 周期境界条件 / 無条件一意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では分散型に分類される非線形偏微分方程式について,周期境界条件下での初期値問題を中心に,解の存在や一意性などの基本的な性質を調べている.平成26年度は前年度に引き続いて解の無条件一意性と呼ばれる性質を研究し,大きな成果を得ることができた. 無条件一意性は,初期値の属するクラスに応じて定まる自然な範囲において解が一意であることを指し,問題に応じて設定される特殊な範囲においてのみ解が唯一つであるという従来の一意性と区別される.全く異なる方法で構成された解であっても「自然な範囲にある限り」同一のものであることを保証するだけでなく,一意性の成り立つ範囲が一様であることから,極限操作や非線形変換等を介した別の方程式の解との関係を調べる際にも用いられ,基本的で重要かつ非自明な性質である. 前年度はノーマルフォームを用いた手法をいくつかの具体的な方程式に適用して無条件一意性を示したが,今年度はそれらの結果における証明の本質的な部分を再考することで,非常に広いクラスの非線形分散型方程式に適用できる,無条件一意性を示すための一般的な枠組みを与えた.ノーマルフォームの手法では通常,一意性を証明するのに必要な先験評価式を導くために無限個の非線形評価式を示す必要があるが,今回与えた枠組みを適用することにより,それらすべての非線形評価式は基本となる3~5個(最も単純な場合)のシンプルな評価式に帰着される. 実際の適用例として,分散型方程式のシステムであるザハロフ方程式を考え,空間1次元及び2次元における(周期境界条件下での)解の無条件一意性をエネルギー空間において示した.特に2次元の場合は時間局所解の存在でさえ最近まで知られていなかった困難な問題であり,今回与えた枠組みの有用性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
無条件一意性の証明についてはこれまで統一的な手法がなく,個々の方程式に対して非線形共鳴構造や平滑化等の性質を詳細に調べ,それらを用いた非常に緻密な,いわば職人芸的な議論を展開する必要があった.しかし今回与えた枠組みによって無条件一意性の証明は大幅に単純化され,より多くの研究者がトライできるようになったことから,今後のこの分野の進展が大いに期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
ノーマルフォームの手法を応用した無条件一意性の証明方法は,周期境界条件を課さない場合にもある程度適用できると考えており,この場合にも一般的な枠組みを与えるのが直近の課題である.この他にも,最終年度である平成27年度は交付申請書に記載の内容に加え,分散性をもった流体方程式(例えばコリオリ力(回転)の影響を考慮したナヴィエ・ストークス方程式等)に対する分散型理論の応用にも取り組みたいと考えている.また,方程式の係数や周期境界条件に現れる周期を平均化する(あるいはランダム性をもたせる)ことによる従来の結果の改良について興味を持っている.
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Causes of Carryover |
本補助金による年度末の国内出張の日程を急きょ変更し,旅費が少なく済んだため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費に充当する.
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