2013 Fiscal Year Research-status Report
ファインマン・カッツ汎関数に基づく確率解析とポテンシャル論への応用
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24740093
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
田原 喜宏 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00567901)
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Keywords | 確率解析 / マルコフ過程 / ディリクレ形式 / ファインマン・カッツ汎関数 |
Research Abstract |
平成25年度においては, これまでの研究に引き続き加法汎関数によって変換されたマルコフ過程の確率解析を行った. 特に, 状態空間の基礎となる測度がグリーン緊密である場合について論じた. ここで, 測度がグリーン緊密であるとはグリーン関数(マルコフ過程が再帰的な場合は1-リゾルベント)を適当なコンパクト集合の補集合上で積分すれば幾らでも小さくできるという性質である. この仮定のもと, ファインマン・カッツ汎関数によって正規化されたマルコフ過程の滞在時間分布の大偏差原理に関する研究を行った. 平成24年度では連続的な加法汎関数としてグリーン緊密な測度に対応する加法汎関数, 不連続な加法汎関数としてはA_{2}という関数のクラスに対応する加法汎関数によって正規化された場合, 滞在時間分布の大偏差原理が成立することを示した(竹田雅好氏との共同研究)が, これらを更に拡張し, 桑江一洋氏, 金大弘氏との共同研究により, より広いクラスへと拡張した. 結果として連続加法汎関数, 不連続加法汎関数のいずれについても加藤クラスと呼ばれる代表的なポテンシャルを含むクラスに対して, マルコフ過程には同じ仮定を要請したまま大偏差原理が成立することを証明した. これらの結果についてはプレプリントとして纏めている. また, 平成25年度よりスペクトル下限の独立性に関連して, 本質的スペクトルの解析的表現に関する研究に着手した. これはPerssonの定理と呼ばれる, 本質的スペクトルはディリクレ形式のコンパクト集合の補集合の部分のスペクトル下限の上限という形で表現されるという主張である. Perssonの定理は多様体上の拡散過程に対してのものであるが, 平成25年度に入ってからこの主張を一般のディリクレ形式に拡張することを目標に研究を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に於いては, 土田兼治氏との共同研究であるNearly Stable Processについて論文を纏め, 現在修正版を投稿している段階である. 更に桑江一洋氏, 金大弘氏との共同研究も纏まり論文として纏め投稿中である. また本質的スペクトルの解析的表現(Perssonの定理)に関する研究も論文としてはまだ纏まる段階には至っていないものの, 新たなる知見を既に得ており, 研究を継続して遂行することにより纏まった内容とすることを期待できる. これらに並行し, Yaglom極限についても研究の前段階としての知識の準備を遂行しており, 平成26年度, 平成27年度(最終年度)に向けて研究成果を得ることができると期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
Perssonの定理の拡張を主軸とし, スペクトル下限に類似する本質的スペクトルの解析的表現を確率解析の手法を用いて得ると共に, これまで研究の対象としてきたマルコフ過程の殆どがスペクトル下限と本質的スペクトル下限が一致していることに着目している. 現在予想し得る本質的スペクトルの解析的表現, すなわちディリクレ形式のコンパクト集合の補集合の部分のスペクトル下限の上限というPerssonの定理の拡張とスペクトル下限の類似について考察し, ポテンシャル論的考察を行う. これらの結果は滞在時間分布の大偏差原理の証明にも応用できることができる為, 更に広い範囲での研究成果が期待できる. また, 桑江氏, 金氏との共同研究により正規化されたファインマン・カッツ汎関数の大偏差原理について平成24年度より結果が進行したために, 準定常分布とYaglom極限について新たな知見を得るための研究を遂行する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
書籍(洋書)を購入した際に, 外貨との関係で予想したものより廉価で書籍を購入できたこと, また, 研究用デスクトップPCを購入した際にパーツ等が予想より廉価であった為, 購入価格に当初より差異ができた. 書籍及び, 消耗品であるプリンタトナーやPC関連の物品購入に充当する.
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