2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形拡散項を伴うロトカ・ボルテラ系に対する数理解析
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24740101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
久藤 衡介 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40386602)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形解析 / 偏微分方程式 / 現象の数理 / 分岐理論 / 安定性理論 |
Research Abstract |
拡散項と移流項を伴うロトカ・ボルテラ系に対する研究を行った。詳しくは、棲息領域において縄張り争いをする2種類の生物種の時空的な変化を記述する系の研究に力を注いだ。この系では、競合関係にある2種類の生物がお互いの混雑を避けて棲み分けようとする傾向をモデル化する際に、生物種間に働くフラックスを直接的に取り込んだ移流項を採用している。平成24年度においては、時間的定常解の解析を重点的に行った。解析における問題意識として「拡散と移流の強さに応じて定常解集合の形成する分岐構造がどのように変化するのか」といった点が挙げられる。 本年度上半期においては、拡散項と移流項を伴うロトカ・ボルテラ系をノイマン境界条件の下で考え、競合関係にある2種類の生物の内、1種類の生物の拡散と移流がともに強い場合、競合する2種類目の生物の拡散が弱ければ、お互いが共存するような定常解が存在することを数学的に証明した。Lou-Ni(1996)による研究で、移流項を伴わないロトカ・ボルテラ競合系において、2種類の競合種の拡散力に十分な差がある場合には、共存定常解が存在しないことが知られていた。本研究の成果によって、移流があるケースでは、競合種の拡散力に差があっても共存できる可能性が示された。 本年度下半期には、1種類の生物の拡散と移流を一定比で無限大にしたときの共存定常解の漸近挙動を解析した。その際、共存定常解の漸近収束先を未知関数とするような極限系(シャドウ系)を導出した上で解析する方法をとった。空間1次元に単純化したケースでは、極限系の大域分岐構造を得た。その結果、拡散と移流の比や反応項の係数(増殖率や競合係数)の値に応じて、もう一種類の生物の拡散係数をパラメーターとすると、異なる特異極限(内部遷移層と境界遷移層)を結ぶ分岐曲線が得られた。この分岐曲線は定数解から離れている点が特に目新しい成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」には、ロトカ・ボルテラ型の反応項を伴う拡散方程式系に交差拡散項や移流項を付したモデルに対する研究所信を記述した。本年度は、とくに後者の移流項を伴うロトカ・ボルテラ系に対して「研究実績の概要」で記載したような共存定常解の構造に関する結果を得ることが出来た。この分岐構造に関する結果は、交付申請書には平成25年度以降での完成を予定していたので、当初の計画以上に研究が進展している。また、この成果は、積分条件を伴う楕円型偏微分方程式に対する研究課題などにも波及しており、非線形偏微分方程式の分野に対する貢献も一層期待できる。 一方で、交差拡散項を伴うロトカ・ボルテラ系に対しては、交付申請書に記載した計画より進展が若干遅れている。交付申請書の「研究計画・方法」には、平成24年度では、競合モデルにおいて交差拡散項を無限大とした極限系に対する研究計画を記載した。とりわけ Lou-Ni(1999) の研究で導出された2つの極限系の内、研究成果が乏しい片方の極限系に対する研究の進展を計画していた。本年度においては、その極限系の正値定常解集合が形成する分岐枝の追跡を試みたものの、数学的な解明には至らなかった。研究が難航する原因は、分岐枝が特定の増殖率のときのみ出現すると予想されるため、他の増殖率の場合に正値解の「非存在性」を証明する必要があるからである。偏微分方程式の研究では、解が「ないこと」を証明することが「あること」を証明することより難しくなるケースは多いが、この問題もそうである。分岐枝に対する数値的な追跡を実施し、この分野の研究進展の巻き返しをはかりたい。 上述のように、ロトカ・ボルテラ系に対する数理解析において、移流項を付したモデルに対する研究は当初の計画より進展しているが交差拡散項を付したモデルに対する研究は計画より遅れている。総合的には、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」でも記述したように、ロトカ・ボルテラ競合系において交差拡散を無限大とした極限系に対する研究が当初計画より遅れている。この状況に鑑み、平成25年度においては、この極限系に対する解析を重点的に実施する。とくに、正値定常解の非存在領域を出来るだけ広く求めることが目標となる。必要に応じて、交差拡散系の解析に詳しい国内外の研究者に意見を求め、解析手法を模索したい。 一方で、当初の計画以上に進展している移流項を伴うロトカ・ボルテラ系に対する研究については、空間多次元での解析に着手する。その際、双安定型の非線形項をもつ楕円型偏微分方程式の解集合が形成する大域分岐枝の解明が鍵となる。この方程式に対する研究は日進月歩なため、文献や研究集会で得る最新情報を精査しつつ、独自の成果を提示することを目標とする。 本研究課題の期間は平成24年度から平成26年度であるが、2年目の平成25年度以降においては、研究成果の論文ならびに口頭発表の一層推進する。とくに、国際的な研究集会での発表を増やし、本研究課題の意義を広く主張するとともに、国内外との研究者との連携によって非線形解析学へ貢献することも視野に入れていきたい。 平成24年度は、偏微分方程式の理論的な解析に重点を置き、数値シミュレーションはあまり行わなかった。平成25年度以降は、数値的な分岐枝の追跡などの数値解析を積極的に取り入れていきたい。必要に応じて、電気通信大学の大学院生と連携して、本研究課題に関連する数値シミュレーションのプロブラミングを試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、おおむね予算計画通りの研究費の使用した。次年度使用額8,764円については、関連文献の購入に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)