2012 Fiscal Year Research-status Report
体積保存部分的双曲型力学系に付随する不変葉層の絶対連続性とエルゴード性
Project/Area Number |
24740105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
平山 至大 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50452735)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エルゴード性 |
Research Abstract |
一般に,保測変換の反復合成が生成する力学系が与えられたとき,その測度に関するエルゴード性を判定するのは基本的な問題である.本研究では,コンパクト多様体上の双曲的確率測度(あるいは,双曲的確率測度に絶対連続な確率測度)を保つような可微分写像の反復合成が生成する離散力学系のエルゴード性問題に取り組む.ここに,不変測度が双曲的であるとは,ほとんど全ての点でゼロのLyapunov指数をもたないことをいう. これまでの研究で,力学系に付随する不変葉層対が横断的概到達可能性を満たす場合にはエルゴード的であることは既に確認している.ただし不変葉層対が横断的概到達可能性を満たすとは,大体,不変葉層対のなす直積空間においてほとんど全ての大域的葉対が少なくとも一つの横断的交点をもつことを表す概念である. そこで本年度は,まずこれまでの議論を整備し,それを踏まえて,不変葉層対が概到達可能性を満たす(すなわち,不変葉層対の交差に必ずしも横断性を仮定しない)場合のエルゴード性について考察した.そうして,横断性の仮定がない場合でも,不安定葉層の次元がほとんど至る所一定値であればエルゴード的であることを確認した.従って,残された研究対象は,不変葉層対が概到達可能性を満たし,かつ不安定葉層の次元が殆ど至る所一定値とは限らない場合のエルゴード性問題である.この問題については,ある仮定の下では不安定葉層の次元に差異があっても,これまでに確立した場合に帰着することで,エルゴード性を導けることも確認できた.ただし,この仮定は,相空間の次元が低い場合には十分に意味を持つが,高次元の場合にはかなり強いものである. 以上の結果の一部については,力学系理論の国際会議にて講演を行い,また鷲見直哉氏(東京工業大学)との共著論文の作成にも着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,力学系に付随する不変葉層対が横断的概到達可能性を満たす場合,不変葉層対の交差に必ずしも横断性を仮定しないが不安定葉層の次元がほとんど至る所一定値の場合,の2つの場合について議論を整備することを第一の目標としており,これについては順調に達成できたと思われる. 議論を整備したことにより,不安定葉層の次元が一定でない場合についても,ある仮定の下では,これまでに確立した場合に帰着できることも確認できた.とはいえ,この仮定は,相空間の次元が低い場合には十分に意味を持つが,高次元の場合にはかなり特殊なものであり,今後改良すべき点である. これらの進展の一部について国際会議で講演を行い,また,論文作成にも着手した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,不安定葉層の次元が一定でない場合のエルゴード性問題について考察する. また,これまでの議論を,部分的双曲型力学系のエルゴード性問題へ応用することを考えたい.具体的な計画の一つには,次の予想「双曲的確率測度(あるいは,双曲的確率測度に絶対連続な確率測度)を保つ部分的双曲型力学系が本質的到達可能性を満たすならばエルゴード的である」と本研究成果との関わりを明らかにすることがある.この予想にある本質的到達可能性と本研究で考案した横断的概到達可能性は定義の上では全く異なる概念である.しかし力学系が双曲的確率測度(あるいは,双曲的確率測度に絶対連続な確率測度)を保つ場合には,両者は無関係ではない.この点を詳しく考察する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し.
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