2012 Fiscal Year Research-status Report
汎惑星形成理論を用いた太陽系外地球型惑星の形成と進化に関する数値計算
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24740120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 貴教 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特任准教授 (70614064)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 地球型惑星 / 惑星形成論 / 汎惑星形成理論 / 生命居住可能惑星 / 巨大衛星 |
Research Abstract |
本研究課題では、太陽系外地球型惑星について、汎惑星形成理論を用いた数値計算により、その形成と進化の過程を議論する。本年度は基本的な数値計算コードの作成と、今後の理論モデル拡張のための複数の基礎的研究を行った。 まず汎惑星形成理論に関する基本的な数値計算コードを、Sasaki et al. (2010) で用いた数値計算コードを拡張することにより作成した。具体的には、原始惑星系円盤内の粘性加熱や中心星放射量の変化によって氷境界が動径方向に移動することを、Oka et al. (2011) の表式を用いてモデルに組み込んだ。また、氷境界の移動に伴い、各位置で形成される微惑星の成分(岩石・氷・ガス)の割合が変化するので、成長する原始惑星の成分を新たな物理量として導入した。本研究で作成した計算コードは汎用性が高く、多様な原始惑星系円盤における多様な惑星形成の研究に応用することが可能である。次年度以降は本コードを用いて地球型惑星の形成に関する大規模なモンテカルロシミュレーションを行う予定である。 一方、生命居住可能な惑星の多様性を議論するために、内部海を持つ地球型惑星、および巨大ガス惑星周りに形成される巨大衛星の形成と進化についても基礎的研究を行った。前者については、Tajika (2008) を参考に地球とは異なる海水量・放射性熱源量を持つ地球型惑星の熱進化を解き、多様な内部海を持つ地球型惑星が存在すること、および高圧氷の発生により内部海の構造が大きく変化することを示した。この成果については、複数の学会・研究会において発表を行い、査読論文として現在投稿中である。後者については、複数の先行研究を拡張することで、生命居住可能な巨大衛星の存在可能性について検討し、その形成・進化・安定性について議論した。この成果についても、学会発表および査読論文の投稿に向けて現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の予定通り、汎惑星形成理論に関する基本的な数値計算コードを作成することができた。複数のテスト計算を行うことで計算コードの正確さも確認されており、次年度以降の大規模なモンテカルロシミュレーションへ向けて、十分な準備ができた。また本年度に作成した計算コードは汎用性が高く、今後も様々な問題に適用することが可能である。数値計算コードの作成に関して、短期間でかなりの研究の進展があったと考える。 一方で、当初の研究計画の枠を超えた新たな研究課題についても積極的な取り組みを行い、この新しい課題を含めたより複眼的な研究を進めることができた。多様な地球型惑星・生命居住可能惑星の形成と進化を議論するためには、太陽系には存在しないタイプの惑星・衛星についても考慮する必要がある。新たな研究課題への取り組みにより、今後の汎惑星形成理論の拡張に向けて、非常に重要な研究成果を挙げることができた。いずれの研究課題についても、先行研究のレビューから計算コードの作成、それを用いた具体的な応用計算まで、短期間でかなりの研究の進展があったと考える。 以上の研究成果については、特に新たな研究課題について非常に画期的な結果を得ることができ、国内外を含む複数の学会発表によって報告を行った。本年度は基本的な数値計算コードの作成、および新たな研究課題への取り組みを開始したばかりであるため、現段階で本研究計画に関連した査読論文はまだ出版されていないが、すでに投稿中の論文が1本、現在投稿準備中の論文が2本あり、次年度以降これらを随時出版していく予定である。 本年度は、研究計画の遂行および新たな研究課題への取り組みにおいて、質・量ともに非常に充実した活動を行い、期待以上の研究の進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作成したモデルを用いて、地球型惑星の形成に関するモンテカルロシミュレーションを行う。主に原始惑星系円盤の粘性・降着率が氷境界の移動率を支配するため、これらをパラメータとして計算を行い、形成された地球型惑星の質量・密度と氷(水)の量を定量的に求める。ここでは形成後の惑星の進化を考えていないため、惑星形成環境の動的な変化のみで達成される地球型惑星の多様性、および質量・密度分布などが明らかになる。 一方で、惑星形成過程で予想される天体同士の衝突、および中心星輻射による大気散逸について、N体計算・SPHシミュレーション、およびハイドロダイナミックエスケープを用いた数値計算を行う。まずN体計算・SPHシミュレーションの基本的な数値計算コードを拡張し、多体問題専用計算機やGPUなどを活用することで、天体衝突に関する計算を行う。所属大学(東京工業大学)には大量のGPUを搭載したスーパーコンピュータ(TSUBAME2)もあるので、可能であればこれも利用する。N体計算の結果から、各天体衝突の相対速度と角度を求め、それを先行研究の表式に代入することで、各衝突による大気散逸・質量散逸の量を求める。次にハイドロダイナミックエスケープの計算コードを用いて、各位置における惑星の大気散逸・質量散逸の量を求める。ここで中心星輻射の強さについては、観測値をもとに各年代ごとの値を与える。 これらN体計算とハイドロダイナミックエスケープの数値計算の結果から、予想される惑星の成分の時間進化について半解析的な式を導くことで、汎惑星形成理論を拡張する。主に大気や氷の層の蒸発・散逸によって、惑星の成分・密度が時間進化する。こうした効果を新たにモデルに組み込み、再度モンテカルロシミュレーションを行うことで、形成後の惑星の進化まで考慮したときの地球型惑星の多様性、および質量・密度分布などが明らかになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)