2012 Fiscal Year Research-status Report
X線・ガンマ線観測による銀河中心高エネルギー活動の解明
Project/Area Number |
24740123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
信川 正順 京都大学, 白眉センター, 助教 (00612582)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線天文学 / 銀河系中心 / 超新星残骸 / ASTRO-H |
Research Abstract |
我々の銀河系内に広がる拡散X線放射は、高温プラズマと中性物質からの2成分から成る。本研究では後者の中性物質からのX線放射の起源解明を目指しており、前者のプラズマ成分の正確な評価が重要になる。そこで、平成24年度は、すざく衛星による観測データを用いた、銀河中心~銀河リッジ領域の重元素輝線の強度分布の精密測定を行った。特に、シリコンや硫黄など鉄以外の元素について初めての測定であった。その結果、銀河中心とリッジ領域でプラズマは低温と高温の2成分からなり、さらに高温成分に関しては銀河中心の方が温度が高く、低温成分は逆にリッジ領域の方が高い温度を示すことを明らかにした。このことは、銀河中心とリッジ領域では拡散X線の主な起源が異なっていることを示している。 さらに、超新星残骸 G346.6-0.2の観測を行い、過去最高精度の精密スペクトルを得た。その結果、従来考えられていたプラズマ進化では説明できない特徴再結合連続X線=を持つことを明らかにし、進化過程で特別なイベントが生じた可能性がことを明らかにした。 また、すざく衛星の検出器較正も進め、平成24年度までに得られた観測データの精度向上も行った。 次期X線天文衛星ASTRO-Hの開発を進めた。主に軟X線を撮像分光するX線CCDカメラSXIのエンジニアリングモデル(実際に衛星に搭載するフライトモデルと同等品)の機能試験、および性能向上のための試験を行った。その結果、鉄輝線のエネルギー帯域で目標としている150 eVのエネルギー分解能をほぼ達成することに成功した。また、フライトモデルの機能試験に向けた、X線発生装置の開発も行った。観測データのフォーマットや処理システム、解析方法の検討も行い、衛星打ち上げ後に即時成果が得られるように準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すざく衛星による観測データを用いて、銀河中心から銀河リッジに広がる拡散X線放射の精密測定は研究目的の一つであり、目標通りの平成24年度の研究成果である。さらに、新しいタイプの超新星残骸の発見は、思いもよらぬ成果であった。また、すざく衛星搭載の観測装置XISの機上較正を行い、打ち上げから7年経った現在でも高い性能を保持することができている。 2010年代後半から世界でただ一つのX線天文台になるASTRO-H衛星の開発も順調に進んでいる。申請者は主に、観測データの地上処理系と解析ソフトウェアの開発、および軟X線CCDカメラ SXI の開発を行っている。平成24年度は打ち上げ後に向けたデータフォーマットの検討やソフトウェア群の設計を進めており、またエンジニアリングモデルを用いた機能・性能試験を行い、目標の性能を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ予定通り研究は進んでいるので、当初の計画から大きな変更はない。平成25年度はガンマ線観測データを用いて、銀河中心領域の宇宙線の強度分布を調査する。また、米国サンタフェで開催される銀河中心研究会に参加し、最新研究成果の情報収集を行い、自身の研究にフィードバックをする。平成24年度の研究成果として、新しいタイプの超新星残骸の発見がある。超新星残骸は拡散X線のプラズマの起源候補としても考えられるが、一方で、宇宙線加速源の有力候補であり、本研究に最も関連性が高い。すざく衛星は超新星残骸を多数観測しており、新タイプが他にないかの調査も行う。既に観測データはあるので、新たに観測提案をする必要がなく、コストパフォーマンスが良い。 すざく衛星の較正および、ASTRO-Hの開発は予定通り行う。平成25年度からはASTRO-Hのフライトモデルの製作と性能試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(11 results)