2012 Fiscal Year Research-status Report
3次元太陽フレア数値シミュレーションによる粒子加速モデリング
Project/Area Number |
24740132
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
西塚 直人 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (10578933)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 数値シミュレーション / 太陽フレア / プラズマ / 磁気リコネクション / 粒子加速 |
Research Abstract |
本研究では、太陽フレア中で起こる非定常磁気リコネクションを3次元磁気流体シミュレーションによって再現し、さらにテスト粒子シミュレーションを行うことで、非定常性で生じるプラズモイド噴出やマルチ衝撃波に伴う統計的(多段階)粒子加速について解析することを目指す。粒子は陽子、電子それぞれの加速過程について別の方法で計算し、短時間における加速過程と、磁気ループ補足を考慮した長期変動過程と両方を調べる。 平成24年度は3次元磁気流体(MHD)シミュレーションによる非定常3次元太陽フレア・磁気リコネクションのシミュレーションコード開発を行い、太陽フレア中の3次元的な電流シート形成と磁束管噴出のダイナミクスのシミュレーションを実現することに成功した。ここでは非定常プラズモイド噴出の2次元MHDシミュレーションを3次元方向に一様に拡張したモデルを採用した。初期条件としてフォースフリーなコロナ磁場を仮定し、その中のヌル点に磁束管を配置することで平衡かつ不安定な状態ができる。この磁束管の中心部分を少し持ち上げることで、磁束管は平衡状態を失い浮上を始める。高解像度でシミュレーションすることで、3次元電流シートの小さな構造(プラズモイドの形成と噴出)を計算することに成功した。また、磁束管の磁場強度を保ちながら縦横磁場比といった物理パラメータや空間分解能を変化させた結果、噴出時の磁束管の捻じれのダイナミクスやリコネクション磁場構造の違いなどが発見された。さらに計算結果の電場磁場データをもとに、陽子をテスト粒子としてコロナ中に注入し、粒子の大まかな軌道とエネルギーの時間変化を調べた。粒子加速過程に関しては論文を出版したほか、3次元磁束管噴出の論文も現在投稿しており、国内国外学会にて発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は3次元磁気流体(MHD)シミュレーションによる非定常3次元太陽フレア・磁気リコネクションのシミュレーションコード開発を行い、太陽フレア中の3次元的な電流シート形成と磁束管噴出のダイナミクスのシミュレーションを実現した。また、高解像度シミュレーションや磁場縦横強度比を変えた異なる物理パラメータによるシミュレーションも行った他、テスト粒子計算にも取り組んだ。これらは当該年度に予定した内容であり、だいたい達成されつつある。また国内国外学会における発表も積極的に行い結果をアピールしている。一方で、研究を進めていくなかで電流シートを分解するために予想以上に高分解能の計算が必要であったり、大容量データの解析が大変である点、また現モデルでは考慮していなかった磁束管内の高密度プラズマが面白い振る舞いをしている観測例を発見し、そのモデル化に取り組んだ結果予定していたよりも時間がかかり、当初予定していた熱伝導の効果を考慮した彩層蒸発を含む太陽フレアのシミュレーションコード開発まで達成することができなかった。これについては平成25年度に継続して研究開発を行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度から継続して彩層蒸発を考慮した3次元MHDシミュレーションのコード開発を行い、計算結果を解析する。さらに得られた結果をもとにして、観測との比較解析を行う。観測データに関しては、ひので衛星プロジェクトのスタッフ、飛騨天文台や野辺山天文台のスタッフに適宜協力を依頼する予定である。また申請者のJAXA宇宙科学研究所/国立天文台ひので科学プロジェクトのプロジェクト研究員という身分を活かし、必要な観測データを自分でプラニングすることも可能であり、実施方法を検討する。 次に3次元MHDシミュレーションによって求めた電場磁場の計算結果を用い、テスト粒子の振る舞いを調べる。まずラーマー半径の大きな陽子の運動を調べる。少数の粒子をコロナ中に注入し、各粒子の軌道とエネルギー時間変化を直接追うことによって加速機構を調べる。ここで粒子のジャイロ運動を直接解くか、ガイド中心近似を用いて計算効率を上げる。粒子の注入場所(一様・非一様)や注入時間(定常的・パルス的・間欠的)、初期のエネルギー分布(熱的分布・冪指数の違う非熱的分布)、速度場分布(等方・非等方)を変えながら、加速機構の場所とスペクトルの時間変動を解析する。 さらに平成25年度は、短時間における加速過程に加えて、高エネルギー粒子の磁気ループ補足を考慮した長期変動過程を調べる。陽子の粒子数と計算時間を増やし、粒子の衝突散乱効果を磁場に乱数的擾乱を与えることで考慮し、冪指数の時間変動や空間分布の変化を調べる。次年度も継続して行う。 また、これらの途中経過の成果について論文にまとめ、国内国外学会にて発表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に購入したLinuxワークステーションを、使用状況に合わせてメモリやハードディスクの増設を行い、メンテナンス等を目的として研究費を使用する。また、初年度に購入を見送った学会プレゼンテーション用のノートパソコンを購入する予定である。また、研究の進展に伴って得られた成果を論文として公表するための論文投稿費(1-2編分)、国内学会出張費(年2回程度)、国外学会出張費(年2回程度)、その他国内での研究活動のための移動費に研究費を使用する。
|
Research Products
(16 results)