2013 Fiscal Year Research-status Report
Ｘ線星による銀河中心拡散Ｘ線放射へのエネルギー寄与の解明
| Project/Area Number |
24740133
|
|---|
| Research Institution | Nagoya University |
|---|
Principal Investigator |
森 英之 名古屋大学, 現象解析研究センター, 助教 (20432354)
|
|---|
| Keywords | X線未同定天体 / 銀河系バルジ / 銀河団 |
|---|
| Research Abstract |
銀河系バルジ方向の未同定X線天体の中で、X線天文衛星Suzakuによって初めて行われた、2keV以上の硬X線による撮像分光観測のデータ解析を行った。この天体は、2011年にもChandra衛星によって撮像分光観測が行われている。Suzaku衛星の撮像分光装置はバックグラウンドが低いため、面輝度の低い広がったX線放射に対する感度が高い。実際にSuzaku衛星のデータから、半径4分角程度の広がりを持つ円形のX線放射を発見した。この放射の輝度ピークは、ROSAT All-Sky Survey カタログに記載された未同定X線天体の位置から南東に1分角離れていた。このX線放射の輝度分布は、自己重力系でよく採用されるβ-modelでよく再現できることが分かった。またX線スペクトルからは、赤方偏移 z = 0.13 にある、電子温度 kT = 5.3 keV の高温ガスからの放射であることが分かった。この観測結果は、Suzaku衛星で発見したX線天体が新たな銀河団であることを示唆している。この成果は論文としてまとめられた。
並行して、2012年9月と2013年3月に同じくSuzaku衛星で観測された、未同定X線天体2天体の撮像分光観測データを解析しており、結果を論文にまとめつつある。それぞれの天体は、Algol型の星と銀河団と推定される。さらに、未同定X線天体の位置決定を目的とした撮像観測をChandra衛星に、広帯域X線スペクトルの取得を目的とした撮像分光観測をSuzaku衛星にそれぞれ提案し、5天体に対する観測時間を新規に獲得した。これらは2014年度中に観測が行わる予定で、観測され次第データ解析に移る予定である。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年にChandra衛星で観測した未同定X線天体について、IRSF/SIRIUS装置で可視光対応天体の探査を実施し、多波長観測を進めることでX線天体の同定精度が上がりつつある。またSuzaku衛星によるX線撮像分光観測で、着実に未同定X線源の正体の解明が進んでいる。系外天体や銀河系ディスクのX線源の混入を取り除くことが可能となり、銀河系バルジのX線源の光度関数の完全性が少しずつ向上している。またChandra/Suzaku衛星で新規に観測時間を獲得したことで、未同定X線源のサンプルが合計20天体程度となった。これにより銀河系バルジのX線源について、統計的な議論が可能なレベルまでサンプルを揃えることができたと考えている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
未同定X線天体のサンプルが一通り揃ったと考えられるため、X線撮像分光観測データの解析を押し進める。銀河系バルジ方向の未同定X線源について、X線分光に基づいた種族同定を行って、系外天体や太陽系に比較的近い活動的な星を除外する。残った天体のX線フラックスから、銀河系バルジのX線光度関数を構築する。これを系外銀河のバルジ、例えば楕円銀河のX線光度関数と比較し、我が銀河系バルジの構造形成に対する観測的制限を付ける。さらに、光度関数を積分することによって、比較的明るいX線連星系が銀河系のX線放射強度にどの程度寄与するかを定量的に決定し、その成果を論文としてまとめる。
|
| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに数回、成果発表のために参加を予定していた国際学会期間中に、業務として行う測定実験を行わなければならなかった。学会への参加をキャンセルしたために、旅費に差額が生じた。
これまでに集積した大量のデータ解析をする必要があるため、大容量ストレージと高速の解析ハードウェアを購入する予定である。これらの成果を発表するために、次年度は数回海外の学会に参加する予定である。また現在準備中のものも含めて、これまでの成果を論文としてまとめるため、その投稿料として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)
