2012 Fiscal Year Research-status Report
化学トレーサー利用を目指したTc-99mの半減期変化研究
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24740136
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊永 英寿 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (00435645)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 半減期測定 / 壊変定数 / 化学効果 / テクネチウム |
Research Abstract |
Tc-99mは分子イメージング研究で最もよく用いられる核種であり,その化学状態を知ることは新規薬剤開発の場でも重要である。本研究ではTc-99mの半減期が化学環境で変化することに着目し,Tc-99mの半減期変化がトレーサー量Tcの化学情報のプローブとして適用可能か評価する。 平成24年度は高精度で半減期を測定するための装置を新たに作成した。作成した装置は高純度Ge半導体検出器(HPGe検出器)および,オートサンプルチェンジャーで構成されている。オートサンプルチェンジャーは化学形を調整した測定試料と標準試料(Tc-99mの場合は過テクネチウム酸カリウム)を交互にHPGe 検出器前へ移動させ,自動測定するための装置である。本装置はこれまで用いられてきた測定装置(Kikunaga et al., Proc. Radiochim. Acta 2011)から,Tc-99m放射性医薬品の標識キット等で調製される溶液試料を測定できるように設計を変更した。また,測定時間等の時間情報は,精度や長期安定性を考慮してルビジウム周波数標準からの信号を利用して記録できるようにした。また,従来の装置よりも小型軽量化されており,様々な施設に持ち運び半減期測定実験が出来るように作成した。これらの制御,測定システムはLabviewソフトウェアを用いて開発した。 半減期測定装置の安定性などの性能を評価するために,化学系で半減期が変化しない放射性核種(Sr-85等)を東北大学の930型AVFサイクロトロンを用いた(p,n)反応により製造した。製造した放射性核種は東北大学CYRIC・RI棟に保管してあり,今後性能評価に使用する予定である。 また,Cr-51の半減期測定データを用いて,一連の測定データから正確な半減期を得るための解析法について検討を行った。これらの結果は平成25年度に国際学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の計画では半減期測定装置を新たに作成し,いくつかの放射性核種を用いて作成した装置の性能評価まで行う予定であった。しかしながら,現在までに完了しているのは半減期測定装置を作成して動作確認したところまでであり,放射性核種を用いた実験は行っていない。 理由としては震災により損傷した東北大学電子光理学研究センターの放射性同位元素使用施設の貯留槽復旧工事が長引いており,未だ放射性核種が使用できない状態であることが挙げられる。現在,本研究を実施する放射性同位元素使用施設として東北大学CYRIC・RI棟を使用するために整備している。平成25年度の始めには放射性核種を用いた実験を行う予定である。 現在の達成度については,やや遅れているが平成25年度にその遅れは取り戻せると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の6月にフラッシュADCベースのマルチチャンネルアナライザ(MCA)が納品される予定である。それを平成24年度に作成した半減期測定装置に組み込み,現在用いているアナログベースのMCAと比較してどちらが半減期測定に適しているか判別し,装置としての性能を評価する。 平成25年度はTc-99mをMo-100(γ,n)反応でMo-99を製造し,そのβ-壊変で生成するTc-99mを研究に用いる予定であったが,東北大学電子光理学研究センターの電子線形加速器と放射性同位元素使用施設の復旧が遅れているため,Tc-99m溶液を購入し,それを東北大学CYRIC・RI棟で精製して半減期測定に用いる。 それ以外の研究計画について変更点は無く,様々な化学形でTc-99mの半減期変化量を測定し,その変化量がどのパラメータに依存しているか考察を行う予定である。データが蓄積したところで,錯体合成条件を変化させ(錯体合成に用いる還元剤の量を少なくする等)錯体合成を行い,それが半減期に反映されるかどうか調べる。その変化量や実験条件から,半減期変化が化学状態の変化を反映しているかを確かめ,半減期変化が化学トレーサーとしてどの程度有効かを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額のうち約23万円は既に物品を購入しており,24年度4月支払い分である。約70万円はマルチチャンネルアナライザの購入に使用する予定(発注済)であり,納品が平成25年度のために該当研究費が生じている。また,残りの予算(約17万円)は放射性核種が使用できなかったため,平成24年度に購入できなかったTc-99m溶液の費用であり平成25年度にその分購入する予定である。
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