2013 Fiscal Year Research-status Report
超弦理論におけるゲージ・重力対応の直接検証および重力の量子論的性質の解明
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24740140
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
百武 慶文 茨城大学, 理学部, 准教授 (70432466)
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Keywords | ブラックホール / 超弦理論 / 量子重力 |
Research Abstract |
超弦理論は重力を含む素粒子の理論であり、プランクスケール程度のミクロの世界において重力の量子論的効果を取り入れた解析を行うことができると期待されている。本年度の研究では超弦理論におけるブラックホールについて研究を行い、その熱力学的な性質を理論的に解析した。 超弦理論は弦を基本物体とする理論であり、弦の振動によって様々な素粒子を表すことができる。そして、弦の相互作用を摂動的に取り入れることで、様々な素粒子の相互作用を理解できる。特に弦と弦の散乱過程はこれまでの研究でよく調べられており、これらは重力の量子効果を含むと考えられる。本年度の研究では超弦理論から得られる量子効果を含めた有効作用の解析を行い、運動方程式を解析的に解くことに成功した。より具体的には、超弦理論におけるブラックホール解(D粒子の低エネルギー近似)を量子効果を含めて求めることに成功した。これは、超弦理論の力学的な側面を考慮して量子効果の研究したものであり、解析的な解を得たという点で非常に大きな成果であると考えられる。この研究によって、ブラックホールの事象の地平面は量子効果で小さくなり、温度やエントロピーといった熱力学的な物理量も量子効果の影響を受けることが明らかになった。また、事象の地平面近傍では量子重力の効果が強くなって、その近傍を運動する粒子には斥力が働くことも考察した。 本研究では超弦理論のブラックホール解を量子効果を含めて解析的に議論することができた。一方でD粒子には開弦がくっついて振動しており、この力学系は量子力学によって記述される。このような重力理論と量子論の対応はホログラフィック原理と呼ばれる。今回の研究はホログラフィック原理によるゲージ理論と重力理論の対応を検証するうえでも非常に重要になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子効果を含めた超弦理論の有効作用の解析を行い、具体的に解をもとめることに成功した。これは当初の計画通りである。またこの研究を基にしたゲージ理論と重力理論の対応の検証についても一部研究成果が出ており、国内外でその研究成果について発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究をもとにして、ホログラフィック原理によるゲージ理論と重力理論のより精密な検証を継続して行う予定である。また、量子補正を受けたブラックホール解についてより詳しい解析を行い、漸近的に平坦となるような解を構成することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究の推進および国内での研究発表に専念したため、当初予定していた海外渡航は行わなかった。(ただし韓国のKIASから招聘されてセミナーは行った。) 次年度は海外での研究会に参加して、研究発表を行う予定である。特に米国や欧州で開催される研究会で研究成果をアピールするつもりである。
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Research Products
(6 results)