2012 Fiscal Year Research-status Report
物理点での格子QCD+QED数値計算の実現と陽子荷電半径の計算
Project/Area Number |
24740143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浮田 尚哉 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (50422192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / QCD / QED / 数値計算 / 物理点 / 非摂動効果 |
Research Abstract |
本研究では、現実のアップ、ダウン、ストレンジクォーク質量を用いた物理点で、かつアイソスピン対称性の破れを考慮した1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDの数値計算を実現して、強い相互作用と電磁相互作用が共存する系での非摂動現象を定量的に明らかにする事を目指している。本年度は、1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDの物理点での数値計算を実現してみせた。手法は、以前PACS-CSグループが生成した2+1フレーバーQCDの物理点近傍のゲージ配位を出発点にし、u,dクォークの質量差とQED効果を再加重法で取り入れることにより、1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDの物理点での計算を行った。実際、アイソスピン対称性の破れから来る荷電K中間子と中性K中間子の僅か4MeVの質量差を再現出来た。また、アップ、ダウン、ストレンジクォーク質量を求めた。 最近の格子QCD計算は、精度1%レベルになっていて、アイソスピン対称性の破れの効果が無視出来なくなっているが、本研究は一つの計算手法を提示したことになる。利点は、物理点上で数値計算を可能にするため、直接実験結果と比較出来、更にクォーク質量の軽い領域で複雑な振舞いを持つカイラル外挿による系統誤差を取り除ける事である。 また、結果を論文にまとめ、学会や研究会などで発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先ず最初の目標である1+1+1フレーバーQCD+QEDの物理点計算を実現できたので、研究目的の達成度はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の現実のクォーク質量での数値計算の結果を受けて、有限体積効果と有限間隔効果を調べる。実際、有限体積効果の目安となるパイオン質量 mπ と空間の長さ L の積が mπL=2 程度となり、QCD の有限体積効果だけでも、パイオン等の擬スカラー粒子の質量と崩壊定数に対しては数パーセントとなる。一方、ρ メソン等のベクトル粒子や核子等のバリオンの質量に対する効果は更に大きくなると予想され、無視出来ない。更にQED の効果も考えると、有限体積効果の評価は非常に重要である。ここでは格子間隔と体積をかえた数値計算を行い、スケーリングを調べ残りの系統誤差(有限体積と有限格子間隔による誤差)を評価する。これにより、最終的な軽いハドロン質量スペクトルとクォーク質量の決定、またカイラル有効理論に含まれる低エネルギーの物理に関係した定数を決定する。 上記計画と平行して、従来の測定との不一致が報告されている陽子荷電半径の計算を始める。先ずは、QCD とQCD + QED 上で陽子単体での荷電半径の計算を行う。その後、電子+陽子系とμ 粒子+陽子系での陽子荷電半径の不一致がQCD+QED 内で説明可能かどうかを見るために、レプトン+陽子系のレプトン質量依存性を調べ、理論計算と実験値との比較を行う。 研究成果を発表するためと、情報収集のために、格子QCD の国際会議「Lattice2013」、「Lattice2014」と国内の春と秋の物理学会、さらに関連する研究会に参加する。 研究体制は、平成24年度と同様を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降は、昨年度よりも大きな空間体積でのゲージ配位を生成するので、そのゲージ配位を保存するためのハードディスクを購入し、解析を円滑に行えるようにする。 また、研究結果を発表するための旅費に使用する。
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[Journal Article] 1+1+1 flavor QCD + QED simulation at the physical point2012
Author(s)
S. Aoki, K.-I. Ishikawa, N. Ishizuka, K. Kanaya, Y. Kuramashi, Y. Nakamura, Y. Namekawa, M. Okawa, Y. Taniguchi, A. Ukawa, N. Ukita, T. Yoshie
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Journal Title
Physical Review D
Volume: 86, 034507
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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