2013 Fiscal Year Research-status Report
物理点での格子QCD+QED数値計算の実現と陽子荷電半径の計算
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24740143
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浮田 尚哉 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (50422192)
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Keywords | 格子ゲージ理論 / 非摂動効果 / 物理点 / 数値計算 |
Research Abstract |
本研究では、現実のアップ、ダウン、ストレンジクォーク質量を用いた物理点で、かつアイソスピン対称性の破れを考慮した1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDの数値計算を実現して、強い相互作用と電弱相互作用が共存する系での非摂動現象を定量的に明らかにすることを目指している。 平成24度には、1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDでの物理点計算を実現して見せた。しかし、計算に用いた空間体積は3フェムトメートルのみであった。そのために系統誤差の一つである有限体積効果を低エネルギー有効理論で見積もると、QCDの効果は軽いハドロン質量に対しては大きくても数%程度と評価されたが、QEDによる効果は大きいもので数10%程度となる事が予想された。そのため本年度は、より大きな空間体積、9フェムトメートルでの2+1フレーバーの物理点近傍の格子QCDの配位生成を行った。これにより、QCDの有限体積効果は1%以下でほぼ無視出来て、QEDによる効果は無視は出来ないが評価するための土台が出来た。結果として、この大きな空間体積の配位により、より現実に近い数値計算を可能にするのである。一つの応用例としては、軽い原子核の性質の数値計算にこの配位を使うことができる。ところで、目標は物理点での数値計算なので、物理点近傍の配位を物理点へ補正するために、再荷重法をもちいる。本年度は、2+1フレーバーの物理点への計算を行った。QEDも含めた1+1+1フレーバーの物理点への計算とそれらの解析は来年度に行う予定である。 これらの研究で得られた結果は、シミュレーション学会誌に解説記事として投稿し、またGerman-Japanese Seminar 2013にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の未解決問題である有限体積効果を評価するための格子QCD配位を生成出来たため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度のより大きな空間体積での格子QCD配位生成を受けて、まず、再加重法を用いた2+1フレーバーの格子QCDの物理点での数値計算(軽いハドロン質量スペクトルの計算とクォーク質量の決定)を行い、その後、1+1+1フレーバーの格子QCD+QEDの物理点計算を試みる。その結果を用い有限体積効果の評価を行う。 上記計画と平行して、従来の測定との不一致が報告されている陽子荷電半径の計算を始める。まずは、QCDとQCD+QED上で陽子単体での荷電半径の計算を行う。その後、電子+陽子系とミュウ粒子+陽子系での陽子荷電半径の不一致がQCD+QED内で説明可能かどうかを見るために、レプトン+陽子系のレプトン質量依存性を調べ、理論計算と実験値との比較を行う。 研究結果を発表すためと、情報収集のために、格子QCDの国際会議「Lattice 2014」と国内の学会と研究会に参加する。 研究体制は、平成25年度と同様を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張旅費が、予算請求計画時より安くなったため。 旅費に使用。
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Research Products
(2 results)