2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小池 正史 埼玉大学, 理工学研究科, 非常勤講師 (10447279)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ビッグバン元素合成 / 超対称標準模型 / 暗黒物質 / 始原リチウム欠損問題 |
Research Abstract |
本研究では,素粒子標準模型を拡張した模型のもとで初期宇宙における元素合成を考察した.宇宙観測で発見された暗黒物質の正体は素粒子標準模型で説明できず,拡張模型を考察する必然性がある.この際,観測された始原リチウム7の存在比が元素合成理論による予言の半分に満たない欠損,および最近の加速器実験発見されたヒッグス粒子の質量が125GeVであること,を同時に説明しうる模型を探し,素粒子模型と宇宙の一体的な探求を目指した.検討したのは以下のシナリオである:準安定な負荷電未知粒子が宇宙初期に原子核と束縛状態を組んで相互作用し,始原軽元素の存在比を変えつつ安定な未知中性粒子に崩壊して暗黒物質になる.具体的な素粒子模型として考えるのは超対称標準模型である.先行研究の拡張と,ヒッグス粒子の最新の知見を取り込むことを目指し,最小超対称標準模型にゲージ1重項の場を加えた模型(NMSSM)を考察し,負荷電未知粒子にスタウを想定した. 本シナリオの鍵の1つはスタウの寿命である.(1)自由なスタウが元素合成時まで残存する長寿命,(2)スタウが原子核と束縛状態を組むと速やかに反応すること,の基本的条件に加え,(3)スタウが崩壊してできるニュートラリーノがゲージ1重項場(シングリーノ)を主成分とする,を加えてNMSSM特有の模型を探った.シングリーノの自己相互作用・ヒッグスとの相互作用,2つの結合定数を自由パラメータとして動かし,上記3条件を満たす模型が存在することを確かめ,許容領域を数値計算によって求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の新奇な元素合成シナリオを成り立たせるための前提条件は,NLSPであるスタウの寿命が長く,元素合成時の残存量が十分であることである.そこで,研究初年度である本年度の第一の目標を,NMSSMにおけるスタウの寿命の考察,特にシングリーノの影響を分析・整理することにおいていた. 実行に当たっては,まずNMSSM自体の理解を積みながら,シングリーノがどのような相互作用をするかを確認することから着手した.シングリーノが係わる相互作用の結合定数2つに着目し,これらがスタウの寿命にどのように影響するか,本研究の元素合成シナリオに適合する寿命を予言する模型が存在するか,について分析をすすめた.本年度の研究で一定の知見を得ることができたので,おおむね予定通りの進捗といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,本シナリオを成り立たせるようなNMSSMのモデルパラメータが存在することがわかった.そこで,許容領域からベンチマークポイントを設定して具体的な数値シミュレーションを行う.現時点での暗黒物質および始原リチウムの残存量を計算し,観測論的に許されるモデルパラメータの絞り込みを目指す. そのために,(1)スタウの寿命と,その元素合成時点(宇宙年齢1秒程度)での存在量とのパラメータ空間で,「暗黒物質の残存量」「始原リチウムの残存量」「ヒッグス粒子の質量」の3つの現象論的制限を満たす領域を明らかにする,(2)宇宙の熱史をボルツマン方程式により追跡し,スタウの残存量を評価する,といった切り口から現象論的に矛盾のない素粒子模型を絞り込んでいく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(3 results)