2013 Fiscal Year Research-status Report
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24740145
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
小池 正史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10447279)
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Keywords | 暗黒物質 / 超対称模型 / 標準模型を超える物理 / ビッグバン元素合成 / リチウム問題 |
Research Abstract |
近年の宇宙観測から理論的に説明できない結果が明らかになってきた。宇宙のエネルギー密度組成の問題は特に重大で、バリオンは宇宙の5%ほどにすぎず、20%は正体不明の暗黒物質であることがわかった。また宇宙の始原リチウム存在比の観測値がビッグバン元素合成(BBN)理論による予言値の半分程度であることも問題である(リチウム問題)。これらの2つの宇宙論的問題は、素粒子標準模型を超えた物理への示唆ととらえられる。一方、加速器実験によりヒッグス粒子が同定され、その質量が125GeVであることが判明した。これらの新規な知見を統一的に説明する素粒子模型を探求し、本研究では次最小超対称標準模型(NMSSM)の分析を進めている。 本年度は、レプトンフレーバーの小さな混合を含んだNMSSMにおいて、「暗黒物質の存在比」「リチウム問題」「ヒッグス粒子の質量」の3つの観測値を同時に説明できる可能性が実際に存在することを示した:すなわち、NMSSMに含まれる多くのモデルパラメータに対し、上記3問題を同時に解決するパラメータセットを実際に提示した。まず、先行研究までの知見に基づき「リチウム問題」を解決する上で有望なパラメータ領域を絞りこんだ。次に、そこからベンチマークとなるパラメータセットをとり、「ヒッグス粒子の質量」「暗黒物質の残存量」の予言値をNMSSMToolsにより計算した。こうして2つの問題を同時に説明できるパラメータセットを得たら、それを入力として宇宙初期の元素合成反応ネットワークの計算を行い、リチウムを含む軽元素の残存量の予言値を算出し、それが軽元素量の観測結果とすべて合致することを確かめた。フィードバックを行いながらパラメータ探索をくり返し、ニュートラリーノがシングリーノ的である場合・ビーノ的である場合のいずれの場合についても3問題を同時に解決しうるパラメータセットを発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レプトンフレーバーの小さな混合を含んだNMSSMにおいて、「暗黒物質の存在比」「リチウム問題」「ヒッグス粒子の質量」の3つの観測値を同時に説明できる可能性が実際に存在することを示した。先行研究において、最小超対称模型におけるビッグバン元素合成が「暗黒物質の存在比」「リチウム問題」の2問題を同時解決できることを示したが、次最小超対称模型はこれにくわえ「ヒッグス粒子の質量」も同じ枠組みで説明できることを具体的に示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により,次最小超対称標準模型の枠組みの中で,標準模型を超えた物理を示唆する3つの問題「暗黒物質の存在比」「始原軽元素,特にリチウムの存在比」「ヒッグス粒子の質量」を同時に解決できる可能性があることを実証した.パラメータ領域の中にベンチマーク点を見いだしたことを受け,さらに系統的なパラメータ探索を行い,超対称模型における宇宙元素合成の可能性をさらに考えたい.また,具体的なモデルパラメータの例が得られるようになったことから,その模型を加速器実験で検証できるか,どのようなシグナルが考えられるかといった分析も考察したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数点の物品(文具等)について,納品が年度末に間に合わなかったため. 金額が小さいため,購入予定であった上記の物品(文具等)を新年度に購入する計画である.
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Research Products
(4 results)