2013 Fiscal Year Research-status Report
K中間子重水素原子分光のためのシリコンドリフト検出器の基礎研究
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24740147
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 将春 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (50554044)
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Keywords | K中間子 / X線分光 |
Research Abstract |
当該年度の初頭には、J-PARCハドロンホール内K1.8BRビームラインに於いて1.0GeV/c K中間子ビームを用いたK中間子原子核探査実験を行った。この実験によってK1.8BRビームラインに於ける詳細なビームプロファイル及び運動量広がりを実測する事が出来、K中間子重水素原子X線分光実験に向けての静止K中間子静止数の詳細なモンテカルロシミュレーションが可能となった。本研究の最終目標であるK中間子重水素原子分光の実現に向けての詳細なフィージビリティの検証が可能となり大きな前進であったと言える。上記ビームプロファイルを基に、K中間子重水素原子のX線分光実験のモンテカルロシミュレーションを進めた結果、検出器数、測定環境(温度、磁場)等の実験条件の最適化により、具体的な実現可能性が出てきており、J-PARCにおけるLetter of intent及び新規proposalに必要な基礎スタディーを行った。一方で、シリコンドリフト検出器の性能試験用テストセットアップをJ-PARCハドロンホール内に構築し、性能試験を行っていたが、先のハドロンホール放射線漏洩事故により、ハドロンホール内立ち入り禁止を余儀なくされた。ホール内立ち入り許可が下りるのを待っていたが、年度内は不可能であることが判明し、当該年度内にはテストセットアップの再構築を行っていたが、測定器の一部をハドロンホール内から取り出す事が出来ず、かつ限られた予算内で再度購入する事も不可能であったため、その後理研内に再度セットアップを構築しなおす必要が生じ遅れが生じた。その際、液体窒素を用いた冷却では今後のテストに向けて、作業効率や窒素の確保等不便な点もあるので、ペルチェ冷却装置を備えた真空チェンバーを作成し、テストの準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
J-PARCハドロンホール放射線漏洩事故によって、ハドロンホール内に構築したシリコンドリフト検出器テスト用セットアップを用いて性能試験を進めていく事が出来なくなり、当初予定していたスケジュールで進めていく事が出来なくなったため性能試験自体は遅れが生じている。しかし、セットアップを再構築する際、ハドロンホール内でもともと使用していた装置では無く、よりコンパクトな形状で作成する事によってより、今後のテストが行いやすくなったと言える。また一方で、検出器性能試験とは独立して、本研究の最終目標であるK中間子重水素原子分光に向けてのより詳細なモンテカルロシミュレーションが、K1.8BRビームラインに於けるビームを用いた実験(K中間子原子核探査実験)により得られた為、本実験のフィージビリティの検証が可能となり、必要なシリコンドリフト検出器の数、ビームタイム時間等の検証が行えたので、その分は大きな進展であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
理研内に構築したテストセットアップを用い、引き続きシリコンドリフト検出器の性能試験を進めていく。まずは、水素ガス環境下でのエネルギー・時間分解能等の基本性能を調べたのちに、実際の実験条件に近い数気圧での圧力下の条件に於ける性能を調べる。この試験で問題が無い場合シリコンドリフト検出器をガス標的中に配置できるので、実験のS/N比に大幅に寄与する。そして、ハドロンホールに於いてビーム再開後にはビーム環境下でのテスト及び、K1.8BRにすでに整備されているソレノイドもしくは双極子電磁石を用いて、磁場環境下での分解能等の確認を行う。 それらと並行して、オーストリアウィーンSMI研究所のZmeskal氏と協力して実験proposalを提出し、具体的な実験計画を進めていく。また、今までは100mm2のアクティブ領域を持つものが主流だったが、ごく最近64㎜2の素子が9枚パネル状に配置されたシリコンドリフト検出器が開発された。こちらのシリコンドリフト検出器はZmeskal氏によってテストが進行中であり、J-PARCのハドロンビームが再開した場合には、J-PARCにて大面積シリコンドリフト検出器をハドロンビーム環境下でテストを行う等の議論を現在進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
J-PARCハドロンホール内に読み出し回路を含めた検出器系の整備をH24年度に行い、H25年度に検出器の試験を行う予定であった。H25年5月のJ-PARC放射線漏えい事故後、ハドロンホール内立ち入りが制限され、制限の解除を待っていたがH25年度内はハドロンホールでの検出器のテストといった長期の作業が出来ない事が判明した。実験装置をハドロンホール内から取り出そうと試みたが、放射線汚染の為一部の装置を取り出す事が出来ず、装置の再作成・セットアップの再構築を余儀なくされ、遅れが生じた為、諸々のテストにかかる費用の次年度への繰り越しを申請した。 H25年末に理研内の装置の整備がほぼ完了し、中断されていた試験を再開しつつある。試験の結果を基に読み出し基板の改良及び必要な消耗品にその費用を用いる。また、H26年度中にはハドロンホールでのビームが再開すると期待され、ホール内での電磁石やビーム環境下での性能試験が可能になると予想される。それらに必要な物品(検出器治具、真空槽等)の作成に用いる。また、得られた成果を学会等で発表すべく一部旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)