2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊部 昌宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50599008)
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Keywords | 超対称標準模型 / R-対称性 / 暗黒物質 / LHC / ヒッグス粒子 |
Research Abstract |
LHC 実験によるヒッグス粒子の発見を経て素粒子標準模型はほぼ完成し標準模型を越える物理を探る時代に突入している。中でも暗黒物質、強いCPの破れの問題、統一理論、階層性問題、インフレーション模型などは標準模型の背後に潜む物理への大きなヒントと成っていると期待されている。 今年度の研究実績の一つとして AMS-02 実験によって確認された宇宙線中の陽電子比率異常に関する研究が挙げられる。宇宙線中の陽電子は主に宇宙線源で生成された陽子線と星間物質との相互作用によって生成されると考えられており宇宙線電子・陽電子比は宇宙線のエネルギーが高くなると陽子の拡散の分だけ減少すると考えられてきた。ところが Pamella 実験によって電子・陽電子比が高エネルギー側で増大している異常が報告されており、その異常がAMS-02 実験によって確認された。私は共同研究者と共にそのような電子・陽電子比異常を説明する暗黒物質の候補としてR-パリティが小さく破れた場合の最軽量超対称粒子を考察した。解析の結果暗黒物質の質量の最尤値が 1TeV 程度であることを示した。特に暗黒物質がW-ボゾンの超対称対、Wino、である場合には昨年度提案した"Pure Gravity Mediation Model"と整合性が高く、また将来の宇宙ガンマ線観測を通して確認可能である。 また本年度の他の研究実績として標準模型の強い相互作用のCPの破れの問題に関する考察が挙げられる。この問題に対する有力な解の候補として大域的位相回転対称性の自発破れを用いたアクシオン模型が考えられている。しかしながらそのような対称性の存在は量子重力まで考えると存在することが難しいと考えられている。私は共同研究者とともに量子異常を持たない離散的R-対称性を持つ模型を考えることで実効的に大域的位相回転対称性を持つ模型が実現可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における研究目的の達成度としては順調に進展している。 特に本年度は R-対称性の破れに依って不安定化された暗黒物質の模型、R-対称性を持つインフレーション模型、R-対称性の帰結としてのアクシオン模型など R-対称性の応用される物理の考察を通して超対称模型の在り方への考察を深めた。 特に AMS-02 によって確認された電子・陽電子比異常を説明可能な不安定な Wino 暗黒物質は今後の宇宙ガンマ線の観測や LHC 実験による直接検出も可能な質量を持つため高い検証可能性を持つ模型と成っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もH25年度に引き続き推進方策の一つとして R-対称性とその破れを基軸とした "Pure Gravity Mediation Model" の現象論および宇宙論的考察を続ける予定である。 またH25年度末に報告された BICEP2 による宇宙背景放射のいわゆるB-モードの検出によってインフレーション期のエネルギー密度およびインフレーションを引き起こすインフラトンの振る舞いの様子が明らかになってきた。私は共同研究者と共にそのようなインフレーション模型を実現する分数ベキのインフラトンポテンシャルを持つ模型を提案してきたがそこでは R-対称性が本質的な役割を持っている。H26年度はその模型を詳細に調べることで今後どのように区別可能であるかについても探っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度購入を予定していたデスクトップコンピュータの年度内での購入が出来ないことが判明したため次年度に持ち越すこととなった。 H25年度予定していたデスクトップコンピュータの購入をH26年度に行う予定。
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Research Products
(15 results)