2014 Fiscal Year Research-status Report
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24740151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊部 昌宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50599008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超対称性 / R-対称性 / 暗黒物質 / LHC / 超重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
超対称標準模型はその背後にある力の統一模型との整合性および暗黒物質の候補の内包および統一模型のスケールと標準模型のスケールの大きな開きの安定化という3つの観点から標準模型の背後に存在する最も有力な候補だと考えられている。特に LHC 実験によるヒッグス粒子の発見以降いわゆる量子異常伝搬ゲージーノ質量生成機構を使った重いスフェルミオン模型が最も注目されている。例えば申請者が共著者と共に 2006年、2011年、2012年に提案した純粋重力伝搬模型はヒッグスの超対称対の質量も無矛盾に説明できる非常に成功した模型となっている。
このように量子異常伝搬ゲージーノ質量生成機構に基づく模型の構築は非常に注目されているが、これまでその生成機構自体に幾つか論争が存在していた。特に超空間形式での超重力理論においては量子異常による伝搬ゲージーノ質量に不定性がある可能性が指摘されていた。さらにはその質量生成機構の存在自体を疑問視する議論も存在した。本年度の申請者の共著者との研究では実際には超空間形式での超重力理論においても一定の条件を満たせば量子異常による伝搬ゲージーノ質量には不定性が存在せず量子異常伝搬ゲージーノ質量生成機構が問題無く働くことを示した。そこでは超一般座標変換に対する量子経路積分測度が R-対称性を含む超ワイル対称性を陽に破っていることが本質的な役割を果たしていることが初めて明らかにされた。この進展により量子異常伝搬ゲージーノ質量生成機構に基づく模型の構築は理論的にも問題が無いことが明らかになり今後の発展につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における研究目的の達成度としては非常に順調に進展している。特に本年度の研究で超一般座標変換に対する量子経路積分測度が R-対称性を含む超ワイル対称性を陽に破っていることが発見され量子異常によるゲージーノ質量生成機構が正しいことに決着をつけられたことは非常に大きな進展と言える。
またR-対称性と関連する現象論的な側面に関しても大きな進展が得られた。上記の機構に基づく超対称性模型の大きな特徴としてSU(2)ゲージボソンの超対称対が暗黒物質の候補になる点が挙げられる。今年度申請者は共著者と共にその暗黒物質が我々の銀河の随伴銀河において対消滅する際に発するガンマ線観測によってどこまで迫ることが出来るかを追求した。その結果今後随伴銀河、特に非常に暗い随伴銀河における暗黒物質分布の不定性が古典的随伴銀河における不定性と同程度にまで下げられれば現在の Fermi-Lat 衛星実験を10年程度続けることで全質量領域をテストできることを示した。これは今後の宇宙線観測に指針を与える大きな進展と言え、本研究の目的であるR-対称性の考察とその検証を結ぶ大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで申請者は本研究期間の間R-対称性の現象論的模型における役割およびその実験的検証を追求してきた。その成果の一つとしてヒッグス粒子発見以降期待されている重い超対称標準模型の一つである純超重力伝搬模型に到達している。そこではR-対称性の量子的破れが暗黒物質の質量を決めておりその質量によっては今後のコライダー実験において十分発見可能な領域にあることを示した。また宇宙線観測によってその暗黒物質の全質量領域をカバーできることも明らかにしてきた。
しかしながら一方で R-対称性が高い超対称標準模型と標準模型の3つの力の結合定数が統一されるタイプの超統一理論とは相性が良くないことが明らかになってきた。そこで27年度の大きな目標として力の結合定数が統一されるタイプの統一理論からどのようにして実効的に高い R-対称性を持つ超対称標準模型が導出可能なのかについて議論を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定だった書籍の在庫の都合上止む無く繰り越しし次年度使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該書籍を速やかに購入する予定。
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[Journal Article] Mass of Decaying Wino from AMS-02 20142014
Author(s)
Masahiro Ibe (Tokyo U., ICRR & Tokyo U., IPMU), Shigeki Matsumoto (Tokyo U., IPMU), Satoshi Shirai (DESY), Tsutomu T. Yanagida
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Journal Title
Physics Letter B
Volume: 741
Pages: 134-137
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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