2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊部 昌宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50599008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超対称標準模型 / R-対称性 / 暗黒物質 / LHC / 宇宙論 / 統一模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
[最終年度実績] 本年度の本研究計画の最大の成果として、大統一超対称模型におけるヒッグス2重項3重項問題から得られるR-対称性への一般的な制限の導出が挙げられる。高いR-対称性は超対称性の破れにおける真空の安定性などから重要な対称性であることが知られている。本研究によって伊部は宇宙線研究所の張ヶ谷、鈴木と共に標準模型のゲージ対称性が共通の群に埋め込まれる統一理論においては大統一理論の群の種類によらずにR-対称性は2次の離散群にまで破れている必要があることを示した。この結果は超対称性の破れの機構まで含めた超対称標準模型を構築するのに非常に大きな制限となり重要である。 また本年度のその他の成果として R-対称性が持ち得る超対称標準模型における微調整問題への影響について新しい可能性を示した。LHC によって発見されたヒッグス質量は超対称性粒子の質量がこれまで想定してきたものよりも重い可能性を示唆している。一方でいわゆる電弱スケールの微調整問題から重い超対称粒子の可能性は低いと期待されてきた。本研究によってR-対称性の自発的破れに伴うドメインウォールの形成を考慮に入れた宇宙論を考察すると重い超対称粒子の可能性が必ずしも低いとは言えないことを示した。この議論は LHC 実験でゲージ粒子の超対称対のみが発見された場合に非常に重要な意味を持つと期待される。
[研究期間内の実績] 本研究実施期間に非常に多くの成果を得ることができた。成果例としてはR-対称性が重要な純粋重力伝搬形超対称標準模型におけるゲージ粒子の超対称対の LHC 実験での展望、特荷電・中性ウィーノ粒子の質量差の精密計算、宇宙線観測による中性ウィーノ暗黒物質の探索、超場形式の超重力理論におけるアノマリー伝搬機構の解明、統一理論からのR-対称性に対する制限、その他 R-対称性の宇宙論への応用などが挙げられる。
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