2014 Fiscal Year Research-status Report
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24740152
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
兵藤 哲雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (60539823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハドロン分光学 / ストレンジネス / 共鳴状態 / 複合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画ではカイラル動力学に基づき、K中間子を含む核子系の多彩な現象を解明することを目的としている。今年度の主な成果は以下の3つである。 1)s波共鳴状態の閾値近傍スケーリング:一般にハドロン質量はQCDパラメーターの関数としてスケールするが、同じ量子数を持った2ハドロン閾値を超えるスケーリングを議論するには、閾値近傍でのハドロン間相互作用の非摂動的効果を考慮する必要がある。本課題では一般的な散乱理論の枠組みでs波の閾値を超える場合に起きる特殊なスケーリングを導出し、その物理的起源をハドロンの複合性と関連付けた。 2)現実的K中間子核子ポテンシャルの構築:K中間子と核子の少数系を記述する基礎となるのはK中間子核子2体間のポテンシャルである。本課題では与えられたカイラル動力学模型の散乱振幅を高精度で再現するポテンシャルを構築する手法を開発し、最新のSIDDHARTA実験による制限を取り込んだ散乱振幅を再現する座標空間ポテンシャルの構築を行った。得られたポテンシャルを用いて、2体準束縛状態であるLambda(1405)の空間構造の解析を行い、ハドロン分子的構造を明らかにした。 3)K-d反応によるLambda(1405)生成の研究:K中間子と核子の準束縛状態と考えられているLambda(1405)の構造を調べるため、J-PARCではK-d反応による生成実験が計画されている。本課題では先行研究の2ステップ近似を用いず、Faddeev方程式を用い終状態相互作用を厳密に取り扱った枠組みで反応の断面積とスペクトルを計算した。結果として終状態のスペクトルは閾値以下のK中間子核子相互作用に感度が高く、Lambda(1405)の性質を引き出せる可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的として1)ハドロン分子的構造の普遍的性質の解明、2)ストレンジネス少数系の構造解析、3)ストレンジネス系の実験的検証、が挙げられるが、今年度は各々の目的に対応した成果が挙げられたので、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で計算の終了している現実的反K中間子核子ポテンシャルおよび重陽子を標的としたK中間子入射Lambda(1405)生成反応の解明の研究を論文にまとめる。また、それぞれの研究を以下のように発展させる。 1)閾値近傍の準束縛状態の複合性:これまでに束縛状態、共鳴状態について拡張されている閾値近傍の状態の複合性の議論を、準束縛状態の場合に拡張し、現実のエキゾチック系に応用する。 2)現実的K中間子核子ポテンシャルの構築:今回有効1チャンネルで構築したポテンシャルを、結合チャンネルをあらわに取り込んだ形で定式化する。また、少数計算への応用も視野にいれる。 3)K-d反応によるLambda(1405)生成の研究:現在の枠組みの拡張として、高いエネルギーでの相対論的効果および異なる終状態チャンネルの取り込みを行い、SIDDHARTA実験による制限を取り込んだ散乱振幅を2体相互作用に用いることで、より現実的なスペクトルの予言を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度中に所属機関で5週間の滞在型研究会を開催し、旅費使用額が予定より少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費として使用する。
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