2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代原子炉ニュートリノ振動実験のための検出器キャリブレーションシステムの開発
Project/Area Number |
24740155
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石塚 正基 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40533196)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子 / ニュートリノ / キャリブレーション |
Research Abstract |
本研究では次世代ニュートリノ検出器における系統誤差を削減し、ニュートリノ振動の測定精度を向上させるために、新しいアイデアに基づく検出器キャリブレーションシステムを開発する。本研究で開発するキャリブレーションシステムではレーザー光源と光ファイバーにより接続された光拡散ボールをあらかじめ検出器内に設置する。設置された光拡散ボールはワイヤー操作により移動可能であるので、検出器の状態を変えずに光源を任意の位置に設置し、検出器キャリブレーションを定期的に行う事が可能である。 本年度(本研究の初年度)はワイヤー、チューブ、ワイヤーを操作するためのステップモーターなどを購入し、小型の試作機を作成した。作成した試作機は動作試験および性能評価に用いる。試作機を用いた動作試験の結果、コンピュータによりモーターを制御し任意の位置に光源を移動させることに成功した。さらに、光源の位置を測定し、設定値との比較により、位置決定精度を見積もった。測定された位置決定精度を既存の原子炉ニュートリノ実験(Double Chooz)による位置再構成の精度と比較した結果、小型の試作機についてはキャリブレーションに十分な位置決定精度を達成できるという結論を得た。 本研究で開発した小型の試作機およびその性能評価については、東京工業大学4年生(当時)のシャランコヴァ ラリッツァさんによる卒業論文にまとめられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では現在計画中の次世代ニュートリノ振動実験の測定精度向上のため、新しいアイデアに基づくキャリブレーションシステムを開発し、その性能を評価することである。本研究で開発するキャリブレーションシステムの特徴として、コンピューターによる光源の遠隔操作が可能であり、結果として、定期的なキャリブレーションが可能であるという点があげられる。 初年度の研究により、小型の試作機を作成した。この試作機は大きさは1メートル程度と実機(数十メートル規模)に比べて小さいが動作原理は実機に即したものである。試作機を用いた動作試験により、コンピューターによりモーターを制御し、光源を任意の位置に配置できることが実証された。さらに、光源の位置を測定した結果、その位置決定精度はキャリブレーションに用いるための要求を満たす事が検証された。 小型の試作機の作成は、本研究の主要な目的として交付申請書にも明記されており、研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は光源に用いるレーザーシステムおよび光拡散ボールの開発を行う。実際のキャリブレーションではレーザーによる光をファイバーを通して検出器中に挿入し、光拡散ボールにより検出器中に照射する。本年度は小型の試作機を開発し、コンピュータによりモーターを制御し、光源を検出器内の任意の位置に移動させるためのシステムの検証を行った。次年度は光源および光拡散ボールの開発に取り組み、最終的には上記の試作機と組み合わせて、より実機に近い形で、最終的な性能評価を行う。 光源については、応答時間のキャリブレーション精度を上げるため、できるだけ発光時間の短いものを用いる。この要求を満たすものとして、次年度の研究費によりレーザー光源を購入する。 ファイバーを通して検出器に挿入された光は光拡散ボールにより検出器中に照射するが、系統誤差を抑えるために、できるだけ一様に分布させることが重要である。光拡散ボールについてはDouble Chooz実験に用いられているものをベースにTiO2チップをシリカゲルで包み込む構造のものと市販のオプティカルセメントに微量のTiO2を混ぜたもの作成する。作成した光拡散ボールについては、光電子増倍管を用いて角度を変えて測定を行い、性能評価を行う。 光源と光拡散ボールをつなぐファイバーについてもアクリルガラス(PMMA)製のものを中心に何種類か用意し、波長依存性、減衰長、曲げ伸ばしに対する耐性などを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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