2012 Fiscal Year Research-status Report
ビー中間子のタウ・ニュー崩壊を用いた新しい物理の探索
Project/Area Number |
24740157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀井 泰之 名古屋大学, 現象解析研究センター, 特任助教 (80616839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | B中間子 / Belle実験 / タウ / ニュートリノ / 荷電ヒッグス |
Research Abstract |
Belle実験で収集したすべてのデータを用い、B→τν崩壊の解析を行った。信号と対を成して生成されるB中間子を、ハドロンへの崩壊を用いてタグする手法を用いた。扱うハドロン崩壊の数をニューラルネットワークを用いて効率的に増やすことで、背景事象を相対的に増やすことなく、信号の検出効率を2.2倍に向上させた。また、これまで背景事象除去のために用いていた質量欠損分布に対する要求を緩めるといった解析手法の改良により、信号の検出効率をさらに1.8倍に向上させた。以上の改良と、データの増量(1.7倍)を合わせ、崩壊分岐比に対する感度は、以前の解析の約2倍に向上した。結果として、単独の手法に対する世界最高感度の測定を行い、崩壊分岐比[0.72+0.27-0.25(stat)±0.11(syst)]x10-4を得た。 得られた結果を、レプトンを含んだ崩壊を用いたタグの結果と混合し、崩壊分岐比[0.96±0.26]x10-4を得た。混合に当たり、共通の背景事象に起因する誤差の相関は、それぞれのタグで選別されたデータに対する同時フィットを行うことで考慮した。 得られた測定値は、標準模型の値と合致するものであった。一方で、標準模型を拡張した模型に対し、強い制限を得た。特に、ヒッグス2重項を2つ含む模型のうちタイプIIと呼ばれる模型に対し、真空期待値の比tanβがO(10)の領域で、O(100) GeVより軽い荷電ヒッグス粒子の存在に強い制約を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Belle実験で得られたすべてのデータを用い、ハドロン崩壊によるタグを用いたB→τν崩壊の解析を完成させた。データの増量、ハドロンタグ効率の向上、信号抽出の手法の向上により、以前の解析の約2倍の感度で、崩壊分岐比の測定を行った。得られた結果と、レプトンを含む崩壊によるタグを用いた解析結果を混合することで、より高い精度で崩壊分岐比を得た。結果として、当初目標としていた精度での崩壊分岐比測定に成功した。 得られた測定値を標準模型の予測値と比較し、それらが互いに合致していることを確認した。一方で、標準模型を拡張した模型に対する強い制限を得ることができた。特に、ヒッグス2重項を2つ含む模型のうちタイプIIと呼ばれる模型に対し、真空期待値の比と荷電ヒッグス粒子の質量に関する強い制限を得た。 以上の成果は、1年目に計画されていた内容を完全にカバーするだけでなく、2年目に計画されていた内容も含む。よって、当初の計画以上に、研究が進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
信号と対を成して生成されるB中間子を、レプトンを含む崩壊を用いてタグする手法の改善の可能性を探る。レプトンを含む崩壊として、これまではB→Dlν崩壊とB→D*lν崩壊が使われてきた。D*中間子は、崩壊でD中間子を生成するため、上述の双方の崩壊に対し、いかにD中間子を捕えるかが重要である。これまで、D中間子の再構成は、3つの崩壊を用いて行われてきたが、KS中間子を含む崩壊などを加えることで、30%程多くのD中間子を捕えられると見積もれる。また、Belle実験で近年導入された新しい粒子選定法を用いると、比較的運動量の低い光子、π0中間子、荷電粒子の検出効率が5-30%程向上する。D*中間子の崩壊で運動量の低い光子またはπ0中間子が放出され、D中間子の崩壊でも複数の荷電粒子やπ0中間子が放出されるため、新しい粒子選定法を用いることで、検出効率が飛躍的に向上すると考えられる。以上の手法変更には、背景事象の増加がつきものであるが、事象選別基準の見直しを行うことで、適切な背景事象除去を行う。 次世代のBファクトリー実験であるBelle II実験におけるB→τν崩壊の測定精度を上げるため、検出器の開発を行う。これまでのシミュレーションや解析を通し、対として生成されるB中間子のタグ効率の重要性が認識された。タグに用いるB中間子崩壊は複数の荷電粒子を放出するため、それらの識別が重要である。一方、信号中のτレプトンも荷電粒子を放出し、識別効率の向上で感度を上げることができる。以上の考察を元に、荷電粒子の識別効率を向上させることを目標に、粒子識別装置の開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表を目的とした国際会議参加のための旅費を、主な支出項目とする。また、研究推進を目的とした打ち合わせ・研究会参加のための旅費を、補助的に使用する。必要に応じ、測定器開発のための装置・備品調達を行う。
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