2013 Fiscal Year Research-status Report
ビー中間子のタウ・ニュー崩壊を用いた新しい物理の探索
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24740157
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀井 泰之 名古屋大学, 大学院理学研究科, 助教 (80616839)
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Keywords | B中間子 / Belle実験 / タウ / ニュートリノ / 荷電ヒッグス |
Research Abstract |
Belle実験で得られたB中間子のτレプトンとニュートリノへの崩壊の分岐比を用い、荷電ヒッグス粒子を含む模型に対する制約を議論した。特に、ヒッグス二重項を二つ含む模型のうち、タイプIIと呼ばれる模型に対し、真空期待値の比と荷電ヒッグス粒子の質量に対する制約を得た。より具体的には、真空期待値がO(10)の領域で、O(100)GeVより小さい荷電ヒッグス粒子質量に対し、高い確度での棄却を行った。また、他の崩壊の分岐比も加えて、真空期待値の比と荷電ヒッグス粒子の質量に対する制約を得るためのツールを開発した。B中間子のD(*)中間子、τレプトン、ニュートリノへの崩壊に対する分岐比の測定結果を含めた結果、タイプII模型に対し、真空期待値の比・荷電ヒッグス粒子質量のすべての領域を99.9%以上の確度で棄却した。 B中間子のτレプトンとニュートリノへの崩壊への感度を上げるために、Belle実験のアップグレードに向けた検出器開発に取り組んだ。これまでのデータ解析やシミュレーションを通し、対として生成されるB中間子を効率的にタグする事が重要であるとわかった。これを達成するためには、対として生成されるB中間子の崩壊で放出されるK中間子とπ中間子を効率的に識別する事が必須である。本研究では、粒子識別装置の開発を行った。粒子識別装置は、石英輻射体でK中間子やπ中間子が発するチェレンコフ光を用いるものである。本研究では、石英輻射体の試作機に対し、内部透過率や表面反射率などの光学的性能の評価を行った。結果として、試作機が、粒子識別に要求される光学的性能を持つ事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Belle実験で得られたデータを用い、B中間子のτレプトンとニュートリノへの崩壊の分岐比を測定した。得られた測定結果を用い、ヒッグス二重項を二つ含む模型のうちタイプIIと呼ばれる模型に対し、真空期待値の比と荷電ヒッグス粒子の質量に対する制約を得た。さらに、より感度の高い測定に向けた粒子識別装置のアップグレードを目的とし、石英輻射体の試作機の光学的性能を評価した。 本年度までの計画は、B中間子のτレプトンとニュートリノへの崩壊の分岐比測定を完了し、荷電ヒッグス粒子を含む模型に関する制約を得ることであった。これは達成され、論文や国際会議で成果を発表した。次年度の計画は、より感度の高い崩壊分岐比測定に向けた検出器アップグレードに取り組むことであった。本年度中に、粒子識別装置の構成要素である石英輻射体に対し、性能評価を行った。つまり、本年度中に、次年度の計画の一部も、推進した。
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Strategy for Future Research Activity |
B中間子のτレプトンとニュートリノへの崩壊の分岐比測定精度を上げるために、検出器アップグレードに取り組む。特に、対として生成されるB中間子のタグ効率を上げるために、粒子識別装置の開発を行う。粒子識別装置の主要構成要素である石英輻射体の光学的性能評価を自動化し、実機に対する評価の準備を行う。要求される精度で表面を研磨できる石英輻射体の大きさには、上限があるため、複数の石英輻射体を接着する必要がある。接着の手法確立および、実機に対する接着準備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の前半に、当初の計画よりも研究が進展し、次年度分の研究費を前倒しした。しかし、前倒し申請時に想定していた程は研究が進展しなかったため、次年度使用額が生じた。 前倒し申請時に想定した研究の残りに加え、研究開始の当初から計画されていた次年度分の研究を完了するために、使用する。
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