2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740159
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
重森 正樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (60608256)
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Keywords | 弦理論 / エキゾチックブレーン / ブラックホール |
Research Abstract |
本研究の目的は、弦理論に存在するがその重要性が最近まで認識されていなかった「エキゾチックブレーン」の性質およびその弦理論での役割を明らかにすることである。 まずは、24年度に引き続き、エキゾチックブレーンの基本的かつ重要な性質の解明を進めた。24年度において私は、エキゾチックブレーンの持つ電荷がモノドロミーと呼ばれる量によりどう矛盾なく定義されるかを明らかにしたが、それだけではまだ弦理論に具体的にどのような電荷を持つエキゾチックブレーンが存在するか、ということは明らかではない。そこで、25年度において私は、3次元超重力理論という枠組みを用いて超対称性を持つエキゾチックブレーンの分類を行った。これにより、超対称なエキゾチックブレーンの配位の分類が数学的にnilpotent orbitと呼ばれるものの分類と対応することが明らかになり、その結果を用いて、様々な量の超対称性を持つエキゾチックブレーンの配位を具体的に構成することができた。 また、ブラックホールの微視的物理とエキゾチックブレーンの関連についても研究を推し進めた。私と共同研究者は以前に、ブラックホールの構成要素は“superstratum”と呼ばれるものであり、一般にエキゾチックブレーンを含むと予想した。私はこのsuperstratumが実際に存在し、さらにブラックホールの持つ微視的状態を説明するだけの揺らぎの自由度を持つことの証拠を、重力と共形場理論との対応関係(ゲージ・重力対応)を援用することにより見出した。 さらに、京都大学基礎物理学研究所において国際研究会「Exotic Structures of Spacetime」を主催して、本研究のテーマの1つであるdouble field theory (DFT)の研究者やブラックホールの微視的状態の研究者を国内・海外から招聘して講演をしてもらい活発に意見交換を行った。特に、DFTの一線の研究者と議論し最新の知識を収集できたことは、今後の研究に役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上の「研究実績の概要」で述べたように、25年度も、エキゾチックブレーンの基本的かつ重要な性質を明らかにする研究を進めた。今回行ったエキゾチックブレーンの分類によって弦理論に存在する超対称なエキゾチックブレーンの配位が明らかになったことは、今後の展開、特に超対称なブラックホールの微視的状態を考える際に有用であると期待される。ただ、この分類の背後にあるnilpotent orbitという数学的構造とエキゾチックブレーンのもつモノドロミーの関係は、25年度中には完全に満足が行くほどには明確にならなかった。この点に関しては、26年度以降の進展が望まれる。 次に、エキゾチックブレーンとブラックホールの微視的物理の関係に関してであるが、superstratumの揺らぎの自由度の数がブラックホールの微視的状態の数を説明するのに十分であるという証拠が得られたのは、ブラックホールをエキゾチックブレーンを用いて説明しようという本研究の今後の展望を非常に明るくするものである。ただし、この結果はゲージ・重力対応を用いた間接的なものであるので、形の揺らいだsuperstratumに対応する超重力理論解を直接的に構成するというのが今後の課題となる。 さらに、25年度において、DFTとブラックホールの微視的状態に関する国際研究会を行い、国内・海外の専門家を招いて議論を行うことにより、DFTに関する最新の知見を学ぶことができた。これにより、26年度以降には本研究に対してDFTの手法を適用する可能性が広がった。 上記のように、本研究の課題は少しずつ着実に進展している。幾つか未解明の部分もあるが、それらはむしろ26年度以降の研究への動機付けとなるものである。よって、私は、本研究がおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に行った研究により、エキゾチックブレーンの分類はnilpotent orbitの分類と深い関係があることが明らかになったが、それとエキゾチックブレーンの持つモノドロミーとの関係は25年度内では完全に明らかにすることができなかった。26年度はこの点を明らかにしたい。また、25年度に行ったエキゾチックブレーンの分類は3次元における極大超重力理論の枠内で行ったが、これをもっと一般の、非極大な超重力理論に拡張することも重要な方向であり、こちらも推し進めたい。これに関しては、共同研究者であるde Boer氏の所属機関であるアムステルダム大学に研究滞在して効率的に研究を進める予定である。 また、ブラックホールの微視的物理とエキゾチックブレーンの関連については、24年度に開発した特別な場合に微視的な解を摂動的に構成する方法を発展させ、また更に25年度に行ったsuperstratumの揺らぎの自由度の解析とそこから得られた多くの知見に基づいて、ブラックホールの微視的状態に対応する新しい解を具体的に構成したい。研究の能率化のため、このプロジェクトに関する共同研究者であるBena氏の所属機関であるCEA Saclayに滞在する予定である。 エキゾチックブレーンを含むような微視的状態の構成はこれまでにまだほとんどなされていない。私は、弦理論におけるsupertube効果と呼ばれる現象を利用して、複雑な形を持ったエキゾチックブレーンを含む微視的状態を具体的に構成する研究を26年度に開始したい。このような微視的状態は非幾何学的であり、これまでに知られた超対称解の構成方法では構成できないと期待される。特に、エキゾチックブレーンの形が比較的簡単な場合にはこれまでに知られているBena-Warner解と呼ばれる超対称解を拡張すれば良いということを示唆する結果を私は得ているので、まずはそのような拡張Bena-Warner解から始め、徐々にさらに一般な解の構成に進む予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Aspects of Exotic Branes
Author(s)
Masaki Shigemori
Organizer
Fourth Joburg Workshop on String Theory
Place of Presentation
University of Witwatersrand, Johannesburg, South Africa
Invited
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[Presentation] Aspects of Exotic Branes
Author(s)
Masaki Shigemori
Organizer
KIAS-YITP joint workshop 2013 ― String Theory, Black Holes and Holography
Place of Presentation
Yukawa Institute for Theoretical Physics, Kyoto, Japan
Invited
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