2012 Fiscal Year Research-status Report
X線観測で探るパルサー星雲からの拡散宇宙線電子陽電子
Project/Area Number |
24740167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
森 浩二 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00404393)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パルサー星雲 / 宇宙線電子陽電子 / TeV 未同定天体 |
Research Abstract |
本研究は、「すざく」衛星を用いた Vela パルサー星雲のX線観測が軸となる。Vela パルサー星雲は、我々の最も近傍に位置するパルサー星雲であり、宇宙線電子陽電子源の有力候補の一つである。Vela 自体は直径8度角もある一方で、「すざく」衛星搭載のX線CCDカメラの視野は0.3度平方なので、必然的に複数回の観測が必要になる。本年度は、過去に観測がおこなわれた領域に、新たに観測された領域を加え、系統的な解析を進めた。これにより本計画を提案した時点で判明していた領域をさらに越えて、非熱的放射が Vela 超新星残骸内の広い領域から検出されることがわかった。これらは、中心にある Vela パルサーから表面輝度の変化が連続して繋がり、また、徐々に低下していくことから、パルサー星雲の拡散を捉えているものと考えられる。これまでにはパルサーから北部と東部にかけて非熱的放射の分布を調べたが、この方角に関しては拡がり方に大きな違いがないこともわかった。 また、別のパルサー星雲についても観測・解析を進めた。まず、TeV ガンマ線で発見され他波長では同定が進んでいなかった HESS J1427-608 に着目し、解析を進めた。これはパルサー星雲からの電子・陽電子の拡散が TeVガンマ線帯域で多数存在する未同定天体の正体でないかと推測したからである。「すざく」衛星による観測をおこない、初めて HESS J1427-608 からX線放射を検出したがパルサー星雲とは断定できなかった。また、Vela 超新星残骸と並ぶ進化した重力崩壊型超新星残骸の代表例である Cygnus Loop からパルサー星雲候補を発見した。 さらに、「すざく」衛星によるケプラー超新星残骸の長時間観測から、爆発を引き起した星の金属量が太陽の3倍近くあったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目的は「パルサー星雲の2成分構造の解明」であり、そのための初年度の柱として「代表天体 Vela パルサー星雲の詳細観測」と「複数天体の系統的データ解析」を掲げた。 「代表天体 Vela パルサー星雲の詳細観測」に関しては、初年度実績は前述の通りであり、提案時に予定していた通りである。この際、新たに観測されたデータの(ユーザーに配布される前の)地上データプロセッシングにおいて地上姿勢決定に問題があったらしく、データが半年以上遅れて配布された。これにより解析に一部遅延が生じたが、次に述べる別天体の解析を先行させるなどして、およそ予定通りに研究を進めることができた。 また、「複数天体の系統的データ解析」に関しては、HESS J1427-608 と Cygnus Loop に関して観測およびデータ解析を進めた。特に前者は、TeV 未同定天体のX線観測としてはめずらしく対応X線放射が検出され、その点にもおいても貴重なサンプルとなった。この結果は、研究協力をおこなっていた宇宙科学研究所所属の大学院生の博士論文の一部としてまとめられた一方で、日本の欧文学術誌でも出版した。Cygnus Loop 超新星残骸において発見したパルサー星雲候補は、長年、多くの研究者が探し求めていたパルサー星雲の有力候補であり、当初計画していたものではなく、予想外の結果であったといえる。さらに、類似天体として研究を進めた、ケプラー超新星残骸の結果も米国の欧文学術誌にまとめ、プレスリリースもおこなった。この点も研究が順調に推移した結果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、Vela 超新星残骸自体は直径8度もあるため、一度の観測提案で全ての領域をまかなうことは困難である。それ故、これまで複数の観測提案の募集に渡って申請をおこなってきた。昨年度も、それまでの結果を元に申請をおこない、観測提案が受理された。これまで北と東の方向を中心に観測してきたが、今度は西側の観測を中心に提案した。これにより、パルサー星雲の拡散が、超新星残骸内部の圧力分布にどのように影響を受けているかを検証することができる。 また、Vela パルサー以外の天体の観測研究も引き続き推進していく。Cygnus Loop に関しては、より詳細な空間分布と固有運動を測定することで、パルサー星雲かどうかを確定させる。そのため、新規観測提案をチャンドラ衛星におこなった。さらに、サンプル数を増やすべく別天体のアーカイブデータの解析も進める。 観測的結果がある程度得られたところで、それを基に電子陽電子がパルサー近傍からどのように脱出し拡散していくか理論的に解明していく。まず、拡散していくためには、イジェクタとの逆行衝撃波による圧縮破壊から、なんらかの方法で生き残る必要がある。また、生き残ったとしても、シンクロトロン放射から見積られる寿命を考えると、単純に拡散し続けていくのは困難にみえる。今後はX線スペクトルの情報と理論家との連携を深めて、この点を詰めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] A Suzaku Study of Ejecta Structure and Origin of Hard X-Ray Emission in the Supernova Remnant G156.2+5.72012
Author(s)
Uchida, H., Tsunemi, H., Katsuda, S., Mori, K., Petre, R., and Yamaguchi, H.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 64
Pages: 61 - 70
Peer Reviewed
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[Journal Article] Discovery of a Pulsar Wind Nebula Candidate in the Cygnus Loop2012
Author(s)
Katsuda, S., Tsunemi, H., Mori, K., Uchida, H., Petre, R., Yamada, S., and Tamagawa, T.
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Journal Title
The Astrophysical Journal Letters
Volume: 754
Pages: 7-11
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High-resolution X-Ray Spectroscopy of the Galactic Supernova Remnant Puppis A with XMM-Newton/RGS2012
Author(s)
Katsuda, S., Tsunemi, H., Mori, K., Uchida, H., Petre, R., Yamada, S., Akamatsu, H., Konami, S., and Tamagawa, T.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 756
Pages: 49 - 56
DOI
Peer Reviewed
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