2013 Fiscal Year Research-status Report
X線観測で探るパルサー星雲からの拡散宇宙線電子陽電子
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24740167
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
森 浩二 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00404393)
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Keywords | パルサー星雲 / 宇宙線電子陽電子 / 超新星残骸 |
Research Abstract |
本研究は、「すざく」衛星を用いた Vela パルサー星雲のX線観測が軸となる。Vela パルサー星雲は、我々の最も近傍に位置するパルサー星雲であり、宇宙線電子陽電子源の有力候補の一つである。このパルサー星雲からの非熱的X線放射の拡がりと異方性を明らかにすることが本研究の目的の一つである。Vela 自体は直径8度角もある一方で、「すざく」衛星搭載のX線CCDカメラの視野は0.3度平方なので、必然的に複数回の観測が必要になる。そのため、パルサーから特定の方向に絞って、視野をずらしながら観測領域を延長していく戦略をとっている。これまでは北部、北東部、東部の観測をおこない、いずれの観測からも非熱的放射を検出した。その表面輝度は、中心にある Vela パルサーから連続して徐々に低下していくことから、拡散するパルサー星雲からの放射を捉えているものと考えられる。その結果に対比させる形で、今年度は西部の観測をおこなった。西部は Vela 超新星残骸の熱的放射の非対称性から、内部圧力が低いことが予想される。そのため、もしパルサー風が超新星残骸の内部圧力の影響を受けているのであれば、他方向に比べより拡がっていることが予想された。観測は成功裏におわり西部からも非熱的放射を捉えたが、その拡がりはこれまでの他の方向とほぼ同様であった。つまり、Vela パルサーからは度の尺度ではほぼ等方的にパルサー風が拡がっていることがわかった。 別のパルサー星雲・超新星残骸についても観測を進めた。まず、かに星雲に関しては、硬X線のスペクトルが時間的に変動しているという示唆を得た。また、超新星残骸 Puppis A に関しては、イジェクタの高分散スペクトルを取得し、その運動学を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目的は「パルサー星雲の2成分構造の解明」であり、そのための柱として「代表天体 Vela パルサー星雲の詳細観測」と「複数天体の系統的データ解析」を掲げている。今年度に関しては、特に前者に注力した。 「代表天体 Vela パルサー星雲の詳細観測」に関する今年度実績は前述の通りである。前年度のデータに関しては、新たに観測されたデータの(ユーザーに配布される前の)地上データプロセッシングにおいて地上姿勢決定に問題があったらしく、データが半年以上遅れて配布されていた。今年度はこのデータ解析を進め、この点に関しては、およそ予定通りに研究を進めることができた。一方で、計画提案時に比べ、新しい観測提案が受理されて観測領域を追加することができた点は、特に進展した点であるといえる。これによりパルサーから様々な方向にむけて非熱的放射の拡がり具合を調査できたことで、その拡がりが等方的であることがわかってきた。以上の結果を、the Suzaku-MAXI conference 2014 の国際会議で報告した。Vela パルサー星雲の研究に関しては、全体的にみて、おおむね提案通りに順調に推移しているといえる。 また、「複数天体の系統的データ解析」に関しては、昨年度に引続き候補天体の解析を進めている。複数の衛星のデータ解析をおこなっているため、解析にはやや時間を要しているが、全体的にみて提案通りであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、Vela 超新星残骸自体は直径8度もあるため、一度の観測提案で全ての領域をまかなうことは困難である。それ故、これまで複数の観測提案の募集に渡って申請をおこなってきた。昨年度も、それまでの結果を元に申請をおこない、観測提案が受理された。これまで北、東、西の方向を中心に観測してきたが、今回は南および Fermi 衛星により検出された GeV パルサー星雲の観測を中心に提案した。これにより、パルサー星雲の拡散が超新星残骸内部の圧力分布にどのように影響を受けているか、及び、GeV 放射の起源を検証することができる。 また、Vela パルサー以外の天体の観測研究も引き続き推進していく。基本的には、サンプル数を増やすべく別天体のアーカイブデータの解析を進める。すざく衛星のアーカイブデータ解析が中心になるが、別衛星のアーカイブデータの解析も進める。この際に衛星毎に得意とする空間スケールが異なるので、その点をうまく利用して、パルサー近傍の分角の尺度から広域の度の尺度まで非熱的放射のプロファイルを調べる。 観測的結果がまとまったところで、それを基にこれまで未知の成分であった広域に拡がっている成分のエネルギー総量を見積もる。これにより、パルサー星雲が宇宙電子線陽電子の供給源として、どれだけ重要であるかを評価する。また、拡散の異方性から、どのようにしてシンクロトロン放射によるエネルギー損失を抑えて拡散していくのかというメカニズムを詰めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入時に円以下の四捨五入の計算の関係で、先方の見積もりから1円分だけ差額がでたため、それが残額としてあらわれた 本年度予算分とあわせて使用する
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Spectral Variation of Hard X-Ray Emission from the Crab Nebula with the Suzaku Hard X-Ray Detector2013
Author(s)
Kouzu, T., Tashiro, M., Terada, Y., Yamada, S., Bamba, A., Enoto, T., Mori, K., Fukazawa, Y., and Makishima, K.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 65
Pages: 74.1 - 74.11
DOI
Peer Reviewed
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