2012 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論間の新関係式の導出と非自明な背景上の超弦理論
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24740170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
疋田 泰章 慶應義塾大学, 商学部, 助教 (80567462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高いスピンのゲージ理論 / AdS/CFT対応 / 二次元共形場理論 / 超弦理論 |
Research Abstract |
超弦理論は量子重力を自己矛盾なく記述する理論であると期待されているが、取り扱いが非常に難しく有意義な情報を取り出すのが困難なのが現状である。特に最近、超弦理論とゲージ理論の対応であるAdS/CFT対応が盛んに研究されている。その理解のためには、反ド・ジッター(AdS)空間という曲がった空間上の超弦理論の解析が必要であるが、未だに解かれていない。そこで、AdS空間上の超弦理論を解析する手法を与えるというが、本研究の目的の一つである。最近超弦理論の簡単化した模型として、高いスピンに拡張された重力理論を利用する手法が注目を集めている。平成23年度に我々は、3次元の高いスピンの超重力理論がある2次元模型と、AdS/CFT対応の意味で対応していることを主張した。平成24年度は主に、この提案のより詳細な解析と拡張を行った。 平成24年度において、2編の論文が雑誌に掲載され、平成23年度に行った研究も含めその内容について様々な研究機関や研究会にて招待講演を行った。一編目の論文では、我々の提唱した対応の検証を行った。2次元模型で重要な物理量として演算子の相関関数があるが、3個の演算子の相関関数を重力側から再現することに成功した。このことにより、対応の検証を与えるとともに、AdS空間上の高いスピンの超重力理論の理解を深めるができた。さらにもう一編の論文では、提唱した対応の両者の理論を縮約することによって、新たなAdS/CFT対応の提唱を行うことに成功した。この新たな対応は、平成23年度に提唱した対応が特別なものではなく、より一般に成り立つものであることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の主目的は、一般に曲がった空間上、特にAdS空間上の超弦理論を解析する手法を開発することにある。また、この超弦理論の解析を用いてAdS/CFT対応の理解を深めることも、目的の一つとなっている。当初の予定では、共形場理論間の新たな関係式を導出し、その関係式を利用することでAdS空間上の超弦理論の解析を行うことになっていた。ところが最近、AdS空間上の高いスピンのゲージ理論に関する研究が盛んに行われるようになった。重力理論はスピン2の場に関する理論であるが、超弦理論には数多くの高いスピンの場が含まれている。高いスピンのゲージ理論は、超弦理論における高いスピンの場の性質をうまく引き継いでいると考えられている。例えば、ブラックホール特異点の解消に関してなど、興味深い研究がなされている。高いスピンのゲージ理論は超弦理論と深い関係にあるため、高いゲージ理論の研究を行うことでAdS空間上の超弦理論に関して深い理解が得られるのではないかと考えた。また、高いスピンのゲージ理論がからむAdS/CFT対応は、異なる共形場理論間の関係に関しても新たな知見を与えてくれる。平成24年度は、高いスピンのゲージ理論とそのAdS/CFT対応への応用に関する研究において、大きな成果をあげることができた。そのため、当初の予定とは多少異なる方法を用いることにはなったが、研究の目的に対して予想以上の成果を上げることができたと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、高いスピンのゲージ理論に関する研究において、大きな成果を得ることができた。平成25年度は、まずこの研究を拡張する方向で推し進めていこうと考えている。高いスピンの理論が超弦理論の性質を受け継いでいることは、定性的には明らかである。ところが、超弦理論の高エネルギー極限では高いスピンの対称性が現れると考えられるので、より直接的な関係も得られるはずである。そこで、高いスピンのゲージ理論と超弦理論のより直接的な関係を明らかしたいと考えている。特に、AdS/CFT対応を拡張することによって、このような関係が理解できると予測している。直接的な関係式を利用することで、超弦理論における物理量を高いスピンのゲージ理論を用いて具体的に計算できるようにしたい。 平成25年度以降は、当初の予定通り共形場理論間の新関係式の導出を行いたい。我々は以前、3次元AdS空間上の弦理論とその動径方向の理論と関係式を経路積分によって導出する方法を開発した。この方法を応用することによって、より多くの新関係式が得られると考えている。さらに、高いスピンのゲージ理論とそのAdS/CFT対応の研究によって得た知識も応用したい。得られた関係式を利用して、AdS空間上の超弦理論のもととなる超群の模型の物理量の計算を行いたい。その解析をもとに、AdS空間上の超弦理論の解析を行い、AdS/CFT対応の研究に応用する。また、宇宙初期やブラックホールの模型を構成し、その模型における超弦理論特有の情報を取り出す。さらに、このようなより現実的な模型に対して、AdS/CFT対応を応用していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費としては、主に出張旅費、特に海外出張旅費に使用する予定である。私は今、ドイツのDarmstadt工科大学のT. Creutzig氏とLuxembourg大学のP. Ronne氏と共同研究を行っている。議論は主にメールで行っているが、しばしば直接会って議論する必要が生じてくる。T. Creutzig氏は今秋からカナダのEdmonton大学に異動する予定であり、春にカナダで三人で会う予定を立てている。また、毎年春にヨーロッパで高いスピンのゲージ理論の研究会を行っており、次年度はその研究会に参加したいと考えている。弦理論の業界で最も大きな国際会議としてstrings2013があるが、次年度は韓国開催予定である。その研究会に関連する小さな会議が日本でも行われる予定であり、その他合わせてさまざまな国内の研究会に参加しようと考えている。さらに、次年度の所属先では計算プログラムのmathematicaのサイトライセンスがないので、研究費で購入する予定である。
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Research Products
(7 results)