2013 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論間の新関係式の導出と非自明な背景上の超弦理論
Project/Area Number |
24740170
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
疋田 泰章 立教大学, 理学部, 助教 (80567462)
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Keywords | 超弦理論 / 二次元共形場理論 / AdS/CFT対応 / 高いスピンのゲージ理論 |
Research Abstract |
曲がった空間、特に反ド・ジッター(AdS)空間上の超弦理論を解析する手法を開発するのが、本研究の主目的である。また、その研究を応用して、ゲージ/重力対応の一つであるAdS/CFT対応の理解も進めたいと考えている。超弦理論のおもちゃ模型として高いスピンのゲージ理論があるが、ここ数年間はこの簡単化された模型を利用した解析を行っている。我々は平成23年度に、3次元の高いスピンのゲージ理論を利用した新たなAdS/CFT対応を提案した。平成24年度は、主にこの対応の詳細な性質の解析を行った。当該年度の平成25年度は、我々の提案を拡張することによって、もともとの問題である超弦理論と関連をつける試みを行った。 高いスピンのゲージ理論は超弦理論のある極限に対応すると言われてきたが、具体的にどのように対応するのかは最近まで知られていなかった。ところが、Chang-Minwalla-Sharma-Yinは、AdS/CFT対応をうまく利用することで、4次元の高いスピンのゲージ理論と超弦理論の間に具体的な対応関係を見出すことに成功した。特に、高いスピンのゲージ理論が、行列に値をとるように拡張することが重要となっている。私たちは、彼らの対応を3次元の高いスピンのゲージ理論の場合へと拡張し、研究成果を論文[JHEP11(2013)038]としてまとめた。さらに、研究集会「頂点作用素代数と超弦理論」と日本物理学会にて、研究発表(口頭発表)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画としては、「新たな理論間の関係式の導出と、それを用いた共形場理論(特に超群の模型)の解析」を通して、曲がった空間上の超弦理論やAdS/CFT対応を理解するというものであった。初年度と当該年度では、研究計画で述べた方法とは少し異なってはいるが、高いスピンのゲージ理論を利用する方法で研究目的を達成することを試みた。初年度は純粋に高いスピンのゲージ理論の研究であったので、研究目的そのものとは少しずれていたかもしれない。ところが、二年目の当該年度においては、高いスピンのゲージ理論と超弦理論との関連について、新たな結果を得ることに成功している。そのため、当初の計画とは方針としては少し異なるが、研究目的に対して予想以上の成果を上げていると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、高いスピンのゲージ理論と超弦理論の関係において、新しい理解を得ることに成功した。そこでこの研究をさらに進めることによって、AdS空間における超弦理論、かつAdS/CFT対応の理解を深めたいと考えている。高いスピンのゲージ理論が超弦理論のどの部分を記述できるのかを明らかにし、具体的に定量的な性質を導き出したい。さらに、もともとの研究計画通り、共形場理論間の新関係式の導出も試みたい。また、その関係式を応用した超弦理論の研究も行う。高いスピンのゲージ理論を通した理解も合わせることによって、当初の想定を超えた進展が期待できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の2月から3月にかけて、カナダにいる共同研究者のところに出張し研究打合せを行う予定であった。ところが、次年度の6月に同じ研究所において国際会議が開催されることとなった。そこで、海外出張の日程をずらし、次年度に国際会議に参加するとともに研究打合せを行うことにした。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 研究費の主な使用目的としては、海外出張、国内出張、および、外国人研究者の招へいに関してである。次年度の6月9日から13日にかけてカナダのアルバータ大で行われる「String-Math 2014」に参加し、さらにその世話人の一人と共同研究の打合せを行うことになっている。さらに、2月から3月にかけてヨーロッパに出張し、高いスピンのゲージ理論に関する研究会に参加する予定である。国内出張としては、基礎物理学研究所で毎年夏に行われている超弦理論に関する研究会、および日本物理学会に参加し、研究発表を行うつもりである。また、平成27年1月初めに立教大学で国際会議を開催する予定であるが、その機会を利用して著名な外国人研究者を招へいし、二次元共形場理論に関する議論を行いたいと考えている。
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