2014 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論間の新関係式の導出と非自明な背景上の超弦理論
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24740170
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
疋田 泰章 立教大学, 理学部, 助教 (80567462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 高いスピンのゲージ理論 / 二次元共形場理論 / AdS/CFT対応 / 国際情報交換 / カナダ:ルクセンブルク |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、高いスピンのゲージ理論と超弦理論との関係性について、AdS/CFT対応を利用した新たな提唱を行い、その物理的意義について理解を深めた。本研究は、曲がった空間、特に反ド・ジッター(AdS)空間上の超弦理論を解析する手法を開発することに目的を置いている。超弦理論には質量はあるが高いスピンの励起状態が数多く存在しており、超弦理論としての特性はこれらの状態が担っている。特に質量のない極限においては、高いスピンのゲージ対称性が現れると期待されている。また超弦理論は、この高いスピンのゲージ対称性の破れた相として記述できると予想されている。高いスピンのゲージ理論を用いた超弦理論の解析手法の有用性は、多くの人によって指摘されていたが、具体的な方法についてはよく分かっていなかった。ところがAdS空間においては、高いスピンのゲージ理論やAdS/CFT対応を利用することができ、最近具体的な議論が可能となってきていた。私たちは以前の研究において、3次元のAdS空間上の高いスピンのゲージ理論と2次元の共形場理論との間の新たなAdS/CFT対応を提唱し、超弦理論との関係を議論した。当該年度の研究成果として、これらの研究をさらに発展させることにより、3次元のAdS空間上の高いスピンのゲージ理論と超弦理論との間の関係をより具体的なものとした。特に、高いスピンの対称性が破れることによってゲージ場が質量を持つようになることを、具体的な例において示すことに成功した。この研究は、多くの人が信じていたアイデアを具体化したという意味で、重要な結果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の題目は「共形場理論間の新関係式の導出と非自明な背景上の超弦理論」というものである。初年度と2年度は、高いスピンのゲージ理論とそのAdS/CFT対応への応用に関して研究を行ってきた。高いスピンのゲージ理論は超弦理論のおもちゃ模型として捉えることもでき、何か超弦理論について定性的な理解が得れらるのではないかと考え、このような研究を行ってきた。ところが当該年度において、より直接的な関係性を明らかにすることに成功した。このことは、予想以上の進展である。この関係性を用いることにより、AdS空間上の超弦理論を高いスピンのゲージ理論を用いて記述することが可能になると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、研究目的を達成するために、研究計画で書いた方法とは少し異なる方法を用いてきた。次年度は、もともとの研究方針である異なる共形場理論間の新たな関係式を利用する方法に戻ろうと考えている。ある程度一般的な群やコセット型の模型について、より簡単な模型に帰着する方法を構築する。その手法を用いて、特にAdS空間上の超弦理論の解析を行う。その際に、これまで行ってきた、高いスピンのゲージ理論に関する新たに得た結果をうまく利用したい。
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Causes of Carryover |
当該年度の春休みの期間を利用して、ヨーロッパで行われる研究会に参加し、さらにルクセンブルクにいる共同研究者と研究打ち合わせを行う予定であった。ところが、京都大学基礎物理学研究所において、私の研究分野かつ研究成果について集中講義を行うことになるなど、予定外に多忙となってしまったので、海外出張を行わないことにした。そのため、前年度からの繰越金も含め、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外出張かつ、国内出張の費用として、研究費を使用する予定である。海外出張としては、6月22日から26日までインドのバンガロールで行われる「Strings 2015」に参加し、最近の研究に関する情報収集を行う予定である。また2月から3月に、ルクセンブルクにいる共同研究者と研究打ち合わせをするため、ルクセンブルク大に滞在しようと考えている。国内出張としては、京都大学基礎物理学研究所で11月9日から13日の日程で行われる国際会議「Developments in String Theory and Quantum Field Theory」に参加する予定である。3月19日から22日に東北学院大学で行われる日本物理学会にも参加予定である。また、基礎物理学研究所にいる共同研究者と研究打ち合わせのため、京都大学に滞在計画中である。
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Research Products
(6 results)