2015 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造・重力レンズ現象を用いた、重力理論の検証と構造形成初期条件への制限
Project/Area Number |
24740171
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
加用 一者 東京工科大学, 教養学環, 講師 (80377928)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 重力レンズ / 宇宙大規模構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,宇宙大規模構造の解析と重力レンズ現象の探査を二つの柱として進めてきた。前者に関しては,速度パワースペクトル測定法の初期成果を得て幾つかの学会で発表を行った。しかし,所属機関の変更によって研究時間の確保が困難になり,当初の目的であった論文執筆にまでは至らなかった。後者に関しては,当初予定した通りの成果を得ることができた。特に最終年度においては,13個の新しい重力レンズクェーサーの発見について論文発表することができた。 この重力レンズ探査計画では,候補天体を追観測して真偽を確かめることを行うため,レンズではないものもたくさん見つかる。その,いわばゴミの中に,物理的に近接したクェーサーの対を数多く発見することができた。これらの空間分布を調べると,通常の銀河よりも密接した状態で存在していることがわかった。このことはクェーサー活動性には近接的な効果が重要であることを示唆している。また,これらのクェーサー対の存在する環境がどのような質量領域であるのかは,現在の観測結果だけからは推定できないということもはっきりとした。これらの発見は,国際研究会に招待されるなど人々の大きな興味を引き,今後も大きく発展させることのできる研究テーマとなった。 また,当初目的としていた強い重力レンズだけではなく,弱い重力レンズの研究にも発展させることができた。特に弱い重力レンズ場のバイスペクトルに着目し,通常のパワースペクトルでは拾い上げられない情報をどれくらい回収できるかを調べた。その効果は小さくなく,観測領域を(観測計画に依存するが)実質1.4倍程度にまで広げることに匹敵することが判明した。実際の観測データに適用するには,ノイズの多いデータに対するバイスペクトル測定法を開発する必要があるが,その効果は大きいことが示されたので,重要かつやりがいのある研究テーマが生まれたと考えている。
|