2013 Fiscal Year Research-status Report
軽い不安定核においてπ中間子が作るテンソル力の働きの解明
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24740175
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
明 孝之 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (20423212)
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Keywords | 核力 / テンソル力 / 殻模型 / 共鳴 / 不安定核 / 複素座標スケーリング法 / クラスター |
Research Abstract |
1. テンソル最適化殻模型(Tensor-Optimized Shell Model, TOSM)を用いてBe同位体の構造と核力の重要成分であるテンソル力の関係を調べた。8Beには分子的な2α構造と、α崩壊しにくい高励起状態が存在する。これらを解析した結果、エネルギー準位を再現し、更に励起状態の予言も行った。また2α状態ではテンソル力の稼ぎが大きいことが判明した。ただし2α状態のエネルギーは実験値よりも不足しており、これはTOSMに将来的に2α成分の導入が必要であることを示唆している。同様の傾向は9Be,10Beでもみられた。 2. 炭素12の基底状態には一体場的な殻模型状態が存在し、励起状態には3αのクラスター状態が存在する。これらの構造をTOSMで解析した。結果、殻模型的状態の記述は成功したが、αクラスター状態は実験値よりも励起エネルギーが高かった。これは空間的に3αに分裂した成分をTOSMに導入する必要性を示唆しており、8Beと共通している。 3. テンソル力により原子核中には高い運動量成分が混ざる。この検証実験に対してTOSMを適用した。具体的には、原子核から核子を一つはぎ取る実験に対してTOSMで解析したところ、核子の運動量分布の再現に成功した。 4. 中性子過剰核と陽子過剰核の鏡映対称性を調べた。対象はHe同位体(6He,8He)とその鏡映核(6Be,8C)であり、α+4核子の5体クラスター模型を用いた。共鳴の記述には複素座標スケーリング法を用いた。その結果、陽子過剰核でのクーロン力による斥力と障壁が、核半径の鏡映対称性を破ることが判明した。斥力の効果が強い場合、過剰陽子群の半径は中性子の場合より広がる。一方、障壁のエネルギーに近い共鳴では、逆に半径が縮まり、対照的に障壁のない中性子群は大きく広がることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. テンソル最適化殻模型TOSMを用いて、テンソル力が如何にして原子核を形成するのか調べる課題については、He、Li同位体、8Beについて成果がまとまった。特に殻模型的状態の記述は予言も含めて成功している。現在はBe同位体、炭素同位体の分析を中心に進めており、適用原子核の範囲が拡張されている。それらの結果からクラスター状態を記述する新しい課題とその方向性も見えてきた。 2. 多体共鳴状態の研究については、5体の共鳴まで求まることが確立し、その詳細な構造を調べることが可能になった。最近は鏡映対称性の議論を共鳴まで含めて行うことが可能になった。これらの成果は、今後の不安定核の物理の発展へ貢献できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. テンソル力の研究については、テンソル最適化殻模型(TOSM)によるHe同位体、Li同位体、8Beの成功を基盤として、更にBe同位体、炭素同位体の解析を進める。今後はより質量数の大きな原子核を扱えるようにTOSMを拡張する。大きな課題としては、一体場的な構造とクラスター構造という空間的に異なる配位の原子核の状態でのテンソル力の働きを解明する。 2. TOSMで得られた波動関数を用いて、テンソル力の検証実験の解析を行う。たとえば原子核内においてテンソル力が生む高い運動量成分の分布を様々な原子核で調べる。具体的には核子を剥ぎ取る核反応実験への適用を行う。 3. 多体共鳴状態の研究については、α粒子のまわりの核子群が作る共鳴・連続状態の分析を終えた。今後はさまざまな芯核の場合における、陽子過剰、または中性子過剰な共鳴状態の予言とその形成機構の解明を行う。たとえば芯核としてトライトン、炭素12、酸素16などを考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた幾つかの国際学会、研究会への参加が、本務先の用務と重なり不参加となったため、そのための旅費を使用しなかった。 主として、1)国際会議、学会等における研究成果の発表と聴講、2)研究に必要な原子核関係の資料、図書の購入に充てる。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Probing effect of tensor interactions in 16O via (p,d) reaction2013
Author(s)
H.J. Ong, I. Tanihata A. Tamii, T. Myo, K. Ogata, M. Fukuda, K. Hirota, K. Ikeda, D. Ishikawa, T. Kawabata, H. Matsubara, K. Matsuta, M. Mihara, T. Naito, D. Nishimura, Y. Ogawa, H. Okamura, A. Ozawa, D.Y. Pang, H. Sakaguchi, K. Sekiguchi, T. Suzuki, M. Taniguchi, M. Takashina, H. Toki, Y. Yasuda, M. Yosoi, J. Zenihiro
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Journal Title
Physics Letters B
Volume: 725
Pages: 277-281
DOI
Peer Reviewed
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